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伝説のスナイパー  作者: まこと
37/162

No.37

回転式拳銃には、全弾装填済みである。

スナイパーは懐の銃を握り、ファッショナブルに着飾った若者達からの好奇の視線に耐えていた。 今スナイパーの味方は、この愛銃だけなのだ。

ここで銃を抜き、発砲すれば服を着飾るどころか、夕刊のトップ記事を着飾る羽目になってしまう。

そんなしょうもない妄想を思い浮かべてみるが、上手く妄想世界に浸ることができない。 椎名をいたぶる妄想すらままならない状況である。

それもそのばず、今スナイパーと葛原が歩いている通りは、通称「ブランドストリート」と呼ばれている。

ファッション界を第一線でリードする一流ブランドショップが軒を連ね、最先端の流行を取り入れた若者達が集まる場所なのだ。 ファッションに免疫のないスナイパーにとって別世界の空間に投げ込まれた心境であろう。

「なあ、大輔。 服買いに行くだけだろ? 一体どこまで行くんだ?」

「あともうちょっとですよ。 それよりジミーさん、どうしたんですか!? 顔が真っ青ですよ」

「ああ、暑くて体調が悪いだけなんだ」

真夏にコートを着ているのだ、体調を悪くして当然である。

「大変だ! 今日は服買うのを辞めて帰りましょう」

格下・葛原に憐れみの言葉をかけられたのがよほど癪に障ったのだろう。

「いや、大丈夫だ。 あと少しだろ? まだまだ平気だよ」

格下が俺に気安く口をきくな! こうなったら意地でも目的地まで行って、このバカを見返してやらないと気が済まないな。

目的地まで行き服を買うのが、いつの間にか目的地まで行き葛原を見返すことに鞍替えしたようである。

そして・・・いつの世にも悲劇は突然にやってくるものなのだ。

ドサッ! 葛原は音のした方を見やると、スナイパーが倒れている。

驚いた葛原はスナイパーを抱え起こし、体を揺さぶった。

「ジミーさん! 大丈夫ですか!? しっかりして下さい!」

やがて意識を取り戻したスナイパーは「いや、大丈夫。 それより、早く服を買いに、行こう・・・」

力無く言うのが精一杯である。 葛原に減らず口をきくことすらままならない状態である。

夏バテの体を、更なる暑さと恐怖が最後の体力までをも蝕んだのだ。

今やスナイパーの中にあるのは、自身を介抱してくれた葛原を見返すことだけが、支えなのである。

途中で幾度も倒れたが、その度に葛原が助け、着いた先が・・・

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