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伝説のスナイパー  作者: まこと
33/162

No.33

べチィッ! 瀕死の椎名に平手打ちを喰らわせ、美香を解放する。

「ジミー、来てくれると信じてたわっ!」美香が抱きつき涙を流す。

美香が椎名に監禁されてるという妄想だけで、スナイパーの怒りは臨界点を超え、妄想から思い込みの世界へと昇華し、挙句美香を具現化させることにまで成功させた。 この一連の騒動は、スナイパーの中では現実とは思っておらず、いつもの妄想だとしか認識していないのだ。

迷惑この上ないとはこのことである。

この惨状は最早妄想でしたでは済まされないレベルにまで発展していた。


哀れむべきは椎名であるが、この男も高校を卒業したら、美香と結婚する旨を父親であるスナイパーに報告したところ、軽はずみに「お義父さん」と口を滑らせたことで、スナイパーを逆上させ、いたぶられる妄想に突入していたのだ。 セーラー服姿の美香が毎度の如く泣き叫んで護るのだが、スナイパーの攻撃は日を増す毎にエスカレートしていくのだった。

「こんな人形を持ってる奴に娘をやれるかっ! いい歳してアホみたいなアニメなんて観おって! 親のスネかじって、死ぬまでそうしてるつもりか!」

椎名は、妄想世界では自身を客観視できるのだが、こと現実においては視野が極端なまでに狭窄するのだった。

そして必ず椎名の妄想世界では、椎名も美香も学生であることに限定されているのだ。

二人は、今この瞬間、同じ世界の同じ空間にいながら、別々な妄想世界に突入しており、お互い現実を共有しない奇妙な関係を構築しているのである。


「ねぇ、そういえば兄貴は?」

「ん? ああ、葛原か。 あいつはデブ椎名のトラップに引っ掛かって重症を負ってるんだ」

本当は無理に押しかけたスナイパーの為に気を利かせ、コンビニにお茶を買いに行っているだけなのだ。

「せっかく生き返ったのに大変ね」

葛原は数年前に死んだ美香の兄で、最近生き返った設定になっている。

必ず椎名の姑息な攻撃によって重症を負い、スナイパーのボルテージを爆発させる起爆剤の役割りとして抜擢されたのだ。

「そんなことよりあたし、あのデブに変なことされそうになったの! 何とか操は守ったけど」

ボルテージを爆発させ役目を終えた葛原は、美香にそんなこと呼ばわりされ、お払い箱となった。

「何ぃ!? あのブタ野郎っ、葛原ならまだしも、美香にまで! もう我慢できん!」

ただ椎名を痛めつけるのに、何かしらの免罪符が必要なだけなのだ。

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