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伝説のスナイパー  作者: まこと
31/162

No.31

駄目だ、撃てない。 壁の断熱材で弾道が変化して、美香に当たるかもしれない!

ドンッ! スナイパーは、椎名のしたたかさに膝をつき、絶望に床を叩いた。

人の部屋に上がり込んで、壁に穴を開けようとしたり、床を叩いたりと横暴な振る舞いを見せている。

椎名め、どこまでも卑怯な奴なんだ!

と、頬に風が当たるのを感じたスナイパーは横を見た。 そうか、窓だ! 窓から入ればいいのか!

季節は夏。 窓が開いてあるはずである。 そこから侵入して美香を助け出せばいいのだ。

葛原がコンビニから帰ってくるまで約20分。 椎名をいたぶり、美香を救出するのに十分な時間と言えよう。


早速ベランダから、椎名の部屋へと移動を開始した。 人間の領域を超えたスナイパーの身のこなしには、目を見張るものがある。 音もなく106号室のベランダに着地した。

この力をもっと別のものに活かせばいいのだが、そんなことを考えてる余裕はない。

やはり予想通りカーテンを閉め、電気も消してるのか。

当然の如く窓にも鍵が掛かっている。 美香が脱水症状でぐったりしている姿を想像しただけで、決意は固まった。

コンッ、防弾ガラスじゃないな。

トンッ! 指突で窓ガラスに穴を開けた。 ほぼ完璧な円形である。

指突は指の関節を固定する力と、弾丸並みのスピードを要求される業である。

鍵を開け、中に入る。

美少女キャラクターのポスターにフィギュア、街灯の灯りからでも引っ越しの挨拶に来た時と変わらぬ佇まいであることが分かった。

部屋の隅に美香が椅子に縛られていた! 実際には椎名がうずくまっているだけである。

スナイパーの妄想は、無機質的空間にイメージを具現化させるほどのレベルにまで昇華していた。 驚くべき早さで才能が開花しようとしている。

スナイパーは、布団にうずまっている椎名の脇腹に、渾身の蹴りを喰らわせた。

ドボッ! つま先が半分以上めり込んだ! 「ぐぴゅっ」獣の咆哮を上げていた椎名の口から、情けない声と共に大量の吐瀉物が撒き散らされ、100キロを超える巨体が宙に浮いた。

スナイパーの蹴りは常人ならば即死を意味するだろうが、コンバットブーツを履いていなかったのと、全身に脂肪を鎧っていたのが幸いしたようだ。

壁に当たり、大小様々なフィギュアが床に散乱した。 椎名が大事に慈しんできたフィギュア達の上に、その巨体が呆気なく落下した。

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