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伝説のスナイパー  作者: まこと
30/162

No.30

「ジミーさんが部屋に寄りたいなんて珍しいですね」

うるさい!さっさと開けろ格下!

幸楽苑で美香を救出することを決意したスナイパーは、105号室の葛原の部屋に上がり、椎名の行動を探ろうとしていた。

いつもは幸楽苑や部屋の前で会話をしていたが、美香が監禁されていると知った今、なりふり構っていられない。

妄想世界から逸脱して、思い込みの世界に入ってしまったのだ。

葛原が鍵の開錠に戸惑っている。

このアパートの鍵にはクセがあり、開錠するにはコツがいるのだ。

何してるんだこのバカは! 鍵も満足に開けられないのか!?

スナイパーは幾度も鍵の開錠に失敗しているのだ、人のことを言えた義理ではない。

しかし、この非常事態宣言が敷かれた今、葛原は何をそんな悠長に構えているのか理解できない心境であった。

「あ、開いた! ちょっと散らかってますけど、どうぞ」

いきなり上がり込み、椎名の部屋の様子を聞こうと壁にもたれ掛かるが、葛原が何事か話していて聞こえずらい。

俺が来たことが椎名にバレるだろ! まずは葛原を部屋から追い出さねばっ!

追い出されるのは自分の方である。

「あ、そういえば、お茶切らしてたんだ。 ちょっとコンビニで買ってきますんで待ってて下さいね」

ナイスタイミング! おまえもやれば出来るじゃないか!

葛原が部屋を出て行くと、懐から銃を取り出した。

湿気った弾丸は処分して、新たに闇ルートの通販で、38口径弾を購入したのだ。


106号室。 椎名は暗闇の中、枕に顔を押し当て獣の咆哮を上げていた。

十年以上椎名と苦楽を共にしてきたフィギュア「胡蝶蘭」改め「美香」が無惨にもバラバラになっていたのだ。

完全に椎名の不注意である。 耐久性に乏しいポリ塩化ビニル製のフィギュアを、枕元に置いて「添い寝」する行為自体に問題があると言えよう。

ぐお~んっ! 涙が止まらない。

「美香」の四肢がバラバラになり、無機質な笑顔で椎名を見つめている。


105号室。 スナイパーは壁の向こうの椎名と美香の行動を聴覚だけで「視て」いた。

美香が口を塞がれているのか!?

スナイパーが銃を構える。

壁の向こうで美香が椅子に縛られている。 その脇には椎名が銃を美香に向けているのが今はっきりと「視えた」。

実際は椎名がうずくまり、枕に顔を押し付けてるだけなのだ。

思い込みの魔力である。

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