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伝説のスナイパー  作者: まこと
29/162

No.29

午前1時。 いつもの幸楽苑にいつもの時間、いつもの席でスナイパーと葛原はラーメンを啜っていた。

幸楽苑のメニューをすべて制覇し、原点回帰したスナイパーは中華そばを啜っていた。

二人の友情のきっかけとなった煮卵も、今では一人一品ずつオーダーしていたのだ。 そして二人の間には、おつまみセットが並んでいた。

そう、スナイパーは今まさに急成長を遂げていたのだ。

「そうだ! 夕方に106号室の椎名さんが悲しそうな声で、みか~!って叫んでたけど、彼女いたの?」

今宵、おつまみセットをオーダーする絢爛豪華な宴のために、夕方聞いた椎名の悲痛な咆哮を葛原に聞かせた。

あんなデブ椎名に女がいるはずない。 そう思いながらも、胸中は焦燥感でいっぱいだった。

「みか? ああ、木嶋さんのことですね。 彼女、木嶋 美香って言うんですよ」

事もなげに言う葛原を見て、中華そばの丼を投げつけたい衝動に駆られた。

あのデブ! 木嶋さんと付き合ってたのかっ!? それ以前にこのバカも、なんで木嶋さんの名前知ってんだよっ!

葛原とは幸楽苑に何度も行き、友達にもなったのだが「人畜無害」のレッテルは、剥がれないまま交流を続けていた。 葛原は、未だに格下に見られていたのだ。

今では煮卵の一件も、余計なお節介としか見ていなかった。

「部屋の壁が薄いから、よく木嶋さんとの会話や、叫び声とか聞こえるんですよ」

葛原がまだ何か話していたが、それだけ聞けば十分であった。

もういい! 黙れ格下。

自身から話題を提供しておいて散々な言いようである。

胃に入った中華そばがせり上がり、丼に戻しそうになった。 見事なサイクルが完成しそうである。

せっかくおつまみセットを囲んでの絢爛豪華な宴が、葛原の一言で台無しになった。 飽くまで被害者然としている。

もしかしたら、椎名は卑怯者だから、木嶋さんを監禁してるのかもしれない!

概ね的を得ている解釈と言えよう。

スナイパーの妄想世界では、美香救出のために葛原を囮に使うが、トラップに引っかかり、またもや重症を負う羽目になっていた。 ここぞとばかりに美香を救出し、スナイパーと二人で悪人椎名を近くにあった看板や角材で殴るのであった。

助けに来るのが遅いと、美香に10tハンマーで追い回される展開で幕を閉じた。

美香を救出しなければ!

早速覚えたての名前を使ってみる。

最早スナイパーには、現実も妄想も区別が付かなくなっていたのだ。

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