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伝説のスナイパー  作者: まこと
22/162

No.22

美香との数分間の会話は、日本に来てから数々の困難や苦労を忘れさせてくれた。 あんなに日本を忌み嫌っていたスナイパーだが、全てを帳消しにしてくれたのだ。

だが、美香は目の前の異国の地から来た男の表情が恐ろしいもののように思えてきたのだ。 気軽に話に応じたことを後悔し始めていた。

木嶋さんは、もしかして命を狙われてるかも知れない。 それらしいことを言ってボディーガードを買って出て、ゆくゆくは俺のパートナーにして新宿を守るか!

完全に悦に浸っている表情だ。

スナイパーが住んでる場所は旧式家屋が大半を占め、歓楽街など皆無の言わば都内有数の下町なのだ。 新宿のような巨大都市とは雲泥の差である。

スナイパーの支離滅裂の妄想は第三者の目から見れば、何バカなこと考えてるんだと一蹴されるが、本人は至って真面目なのだ。

「もし命を狙われていたり、困ったことがあったらいつでも言って下さい。 必ず力になりますから」

「えっ、あ、あの命って・・・」

それらしいことを匂わせる発言どころか、ありのままを直球で言ってしまったのだ。

命を狙われることと、困りごとが同系列に並べられた瞬間である。

「私の知り合いがボディーガードをやってまして、新宿駅の掲示板に〝XYZ〟と書けば、木嶋さんを護ってくれますよ」

すべてアニメの受け売りである。

そして自身が登場してヒーローになろうという算段であったが、美香から衝撃の一言を聞かされ、その計画は脆くも崩れ去るのだった。

「あの、新宿駅に掲示板なんてありませんよ。 今はケータイがありますので・・・」

美香の世代で、シティーハンターを知る者はごく僅かな人数に限られてくるのだ。

えっ? 掲示板がない・・・?

「そ、そうでした? おかしいな・・・ なかったかな?」

美香は今が勝機だと言わんばかりに「あの、それでは夜も遅いことですし、この辺で失礼させていただきます」バタンッ、ガチャッ!

ドアが閉まり、すぐにロックがかかる。 電光石火とはこのことである。

木嶋さんか。 香みたいな人だったな。 ジミー!とか言って10tハンマーで殴ってくれないかな。

即死は免れないであろう。 第一その重量を制御できる人間は皆無である。

スナイパーの内に眠っているマゾヒズムが開花し始めようとしていた。

自身をアニメの主人公に置き替え、挙句には同じアパートの住人までもアニメのヒロインに置き替える。 相手の迷惑は一切省みないのである。

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