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伝説のスナイパー  作者: まこと
21/162

No.21

午後9時。 下町アパートの101号室に住む木嶋 美香は絶句した。

夜にチャイムを鳴らされ、不審に思い対応に出たところ、目の前に薄汚れたコートを着た外国人が、生ラーメンを持ち立っているのを見て変質者だと思ったのだ。

「な・・・なんですかっ!?」

「あ、あの初めまして。 下の階の104号室に引っ越してきましたジミーと申します。 いろいろとご迷惑をおかけすると思いますが、どうぞよろしくお願いします。 こちらよければ、ご家族の方とお召し上がり下さい」本日、三度目の生ラーメンを手渡す。

「ああ、わざわざご親切にありがとうございます。 101号室の木嶋です。 私も先月引っ越してきたばかりなんです」

美香は明らかに、この得体の知れない妙な外国人との接触を避けたがっているようである。

「あの、ご出身はどちらなんですか?」

「えっ、あ、秋田ですけど・・・」

「秋田ですか! あそこは、いろんなフェスティバルがあるし、料理も美味しいと聞きました。 近いうちに休みを利用して行こうと思ってるんですよ」

すべて出まかせである。 そもそもスナイパーは、秋田県がどこにあるのかすら知らないのだ。

「秋田をご存知なんですか! 海外でもそんなに有名なんですか?」

「はい、とても有名ですよ。 私が日本に来た一番の目的は秋田県に行って、フェスティバルや郷土料理を楽しむことなんです」

一番の目的は国会議員殺害である。 いつの間にか目的がすげ変わったようだ。

普段女と接する機会のないスナイパーにとって、日本に来て初めて女と会話をしたのだ。 舞い上がらずにはいられなかったのである。

女に対する免疫のないスナイパーは、会話するときはいつも極端なまでに口数が少ないのだが、今しがたまで観ていたシティーハンターの主人公、冴羽 獠になり切っていたのだ。

軽薄だが頼りになる男性像を演じていると、自然と饒舌になった。

ライバル視さえしていた主人公に、今やすっかり心酔し切っていたというわけだ。

「冴羽 獠」という名のワクチンを手に入れたスナイパーは、最早無敵であった。

ここで銃を見せたら、恰好いいって思われたりして!

危険を誘発するだけである。

こうなったら日本人に帰化して名前も冴羽 獠にするかな!

スナイパーの暴走は、もう誰にも止められないようである。

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