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伝説のスナイパー  作者: まこと
20/162

No.20

アメリカ出身の伝説のスナイパーは、日本のスイーパーが活躍するアニメに夢中になっていた。

106号室の椎名の部屋を後にし、101号室に訪問したが、不在だったため椎名から借りたDVDアニメのシティーハンターを何気なく観てたら、どっぷりとハマってしまったのだ。

住人調査が思わぬ方向にベクトル転換を遂げたようである。

冴羽 獠。 あいつは俺にないものを、あんなにも持っている・・・

スナイパーは物語の主人公と自身の暗い境遇を重ね合わせ、泣いていた。

日本のアンダーグラウンドの世界はこんなにも華やかなものなのか? それに仲間もあんなにたくさんいて、美人なパートナーまでいる・・・ボディーガードの依頼も美人揃い・・・ なんでこんなにも違うんだよ!

当然である。 これは空想が生み出した主人公を二次元空間上で縦横無尽に活躍させる、言わばフィクションの世界なのである。 キャラクターを多数登場させるのも視聴者が飽きてしまわぬようにするための対抗措置なのだ。

「俺なんていつも孤独で、依頼も殺害ばかり、美人どころか女から依頼されたことすらないのに・・・」

思春期の子供が物語の登場人物に自身を重ね合わせる行為に陥る、まさに愚の骨頂である。

「香みたいなパートナーがいれば寂しくないのに」

再び涙を流す・・・ 最早重症である。

「ちくしょう、俺と冴羽とどっちが上なんだよっ?」

今度は主人公と競い出したようだ。

「俺も357マグナム持ってみるかな・・・ それにもう夏だし、コートじゃなくてジャケットにするか! 袖なんてまくったりして!」

限りなく主人公に近づこうとしているようである。

通常コルトパイソン357マグナムは、弾丸の威力が大きく、反動が大きい上に銃身が長く携帯用には不向きなのである。

一方、スナイパーが所持しているS&W M36チーフスペシャルは、38口径弾を使用するため反動が小さく、銃身が短く携帯に便利である上に、至近距離でターゲットを確実に仕留めることができるのだ。

愚かなスナイパーは、アニメの主人公に左右され愛銃を替えようしているのである。

あ、そうだ! 101号室の住人が帰ってきてるかもしれない!

やっと我に返ったようである。


101号室に行き、チャイムを鳴らす。

中から出てきたのは、まだ少女のあどけなさを残した二十代前半と思しき美しい女であった。

か、香みたいだ!

スナイパーの中で、シティーハンターのエンディングテーマ「Get Wild」が流れ始めた。

救いようがないとはこのことである。

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