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伝説のスナイパー  作者: まこと
162/162

No.162

老議員に最後の引導を渡すべく、撃鉄を起こそうとするが、痙攣がひどく指先に力が入らない。

くっ、まずいな・・・ 目までかすんできたかっ・・・

無理もない。 致命傷は免れたとは言え、9mm弾が6発も被弾し、内3発は的確に身体にヒットしたのだ。 出血量は相当なものであろう。

M36を、右手だけで保持することが困難になってきたため、左手を添えた。

カチッ・・・! 痙攣する指先で、どうにか撃鉄を起こす。

「ひぃぃぃぃっ! た、たたた頼むっ、後生ですから、うう撃たないで下せぇっ!」

死の恐怖から、下積み時代の寅太郎少年に退行していた。 奉公先での大店主にへりくだる姿そのままである。

「往生際が悪いぞっ! もう、十分生きただろうが・・・ こ、これ以上手こずらせるなっ。 さっさと覚悟を決めろっ・・・」

「だ、だだったら、ひ、ひひ一つ、一つ聞かせて下せぇっ! あ、あんたさまを雇ったのは、そ、そそ園山なんでございやしょうかっ!?」

スナイパーの目に、温情の念がないことを悟った象山院は、せめて自身を狙っている依頼者を特定したいようである。

「これから、死んでいく人間がっ、知る必要はないだろうっ・・・」

「ひぃぃっ、おたすけぇー! お、お願ぇしますだっ、おたすけくだせぇ!」

「黙れっ! カス虫っ!」

思考がまとまらぬ中でも、鉄の掟は遵守する。

依頼人の名は決して口にしない。

それは、死にゆくターゲットに対しても例外ではない。

ああ、これでやっと終わる。 長かった・・・

このあまりにも暑い、灼熱の地に降り立ち、異国の風土と文化に戸惑いを覚えながらも、友を作り、虐待者を見つけ、純粋無垢な少女と恋に堕ちた。

プロとしての勘は失われてしまったが、この先、一生手に入らぬと思われていた幸せを得ることができた。

寂しいが、今はそれだけで十分だ。 またいつもの殺伐とした日々に戻れば、遠い日の記憶となり、いずれ忘却の彼方へと埋没するはずだ。

ここは暗殺者が住むには、世界が違い過ぎる。 いつしか破綻を来すであろう。

ならば、異端者はただ去るのみ。

もう疲れた・・・ アメリカに帰ろう。 絹江、大輔、さよなら・・・

パンッ!

森閑とした住宅街に、一発の銃声が鳴り響いた・・・


アメリカに超一流のスナイパーがいた。請け負った依頼は、全て遂行させてきた伝説級の男である。

アメリカ・ロサンゼルス。

弁護士・ゲラ ジョナサンは、指定されたホテルのロビーで、所在無気に辺りを見回していた。

まだか・・・ そろそろ約束の時間である。

と、そこへ薄汚れたコートを着た、三十代と思しき無表情な男が現れた。

「・・・あなたは?」

「スナイパー・ジミーだ。 早速要件を聞かせてもらおうか」

終わり。

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