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伝説のスナイパー  作者: まこと
161/162

No.161

カチッ! 撃鉄を起こし、破損した能見の顔面へと狙いを定める。

起死回生の一手を、攻めの一手を、遁走の一手を奪われた能見に、スナイパーが絶体絶命のチェックメイトを突き付けた。

「なあ、何でなんだろうな・・・ な、何で俺たち、殺し合わなきゃ、ならないんだろうな・・・」

「さあな。 ただ・・・ 一つ言えることは、どちらかが、どちらかを殺さなければ、それ以上、先へは進めないってことだけだ・・・」

何かを悟ったのか、やがて俯き、諦観の様相を呈した。

「そうか・・・ シンプルだな・・・ 俺が殺される側で・・・」

「そして、俺が、殺す側だ・・・」

パンッ!

そう言うや、能見の眉間を撃ち抜いた。

スナイパーを、ここまで窮地にまで追い詰めた世界最高レベルの若き護衛者は、想い人、寅子との逢瀬が叶わぬまま沈黙した。

「ちっ、格下だと思って、ゆ、油断した・・・ こ、こいつ、間違いなく本物だっ」

徒手空拳ではスナイパーが圧倒していたものの、こと人間力に関しては能見が勝っていたようである。

スナイパーが日本に滞在してからの自由気ままな放蕩ぶりが、今回の明暗を分けたといっても過言ではなかったであろう。

あとは、あの死に損ないだけか。


「ひぃ、ひぃ・・・ も、もう、もう走れんっ。 こ、このままじゃ、きゃつに殺されるより先に、お迎えが来てしまうわいっ! の、能見は、な、何をしとるんだっ・・・」

若き護衛者達が、スナイパーとの交戦で殉職していったことを知らぬ象山院は、森閑とした住宅街を孫娘への壊れ果てたプレゼント箱を抱え、おぼつかぬ足取りで遁走していた。

「残念だな。 あいつなら、もう来ないぞっ・・・」

な、何奴・・・!? 背後から、こんな時間に、こんな場所で声をかけられるはずがない。 この地域には、寅次郎夫妻の他、知己などいないのだ。

まさか・・・ 恐怖に引きつる顔で、恐る恐る背後を振り向いた。

スナイパーである。

コートから流れ出ている鮮血から、満身創痍であることが診て取れるが、老議員風情に制圧できようはずがない。

「ひぃぃぃっ! の、能見っ! 能見! な、何をしとるんだっ! は、は早く助けんかっ!」

「だから、無駄だって、言ってるだろう・・・ これで、もうお前を護る奴らは、いなくなったな・・・」

孤立無援。 全員死亡。 全ての状況を把握した象山院は、土下座をし、スナイパーに首を垂れた。

「た、頼むっ! 今夜だけは見逃してはくれぬかっ! この通りっ! 孫にプレゼントを渡したいだけなんだっ。 そうしたら、あとは好きにしてくれてもいいっ!」

「それは、聞き入れられない相談だっ・・・ これも、仕事なんでな」

怯える老議員に銃を構える。

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