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伝説のスナイパー  作者: まこと
156/162

No.156

「ひぃ、ひぃ・・・ も、もう限界だ、これ以上走れんわい!」

七十を越える老体の歩である。 走っているつもりでも、徒歩に等しい速度なのだ。 それに加え、事故の影響が今になって表われ、更に歩が遅くなる。

「先生、あともう少しです。 さあ、頑張りましょう。 お孫さんに会いに行くんでしょう」

「能見、頼むっ! ワシをおぶってくれないか。 全身が痛くて死にそうなんだ・・・」

は? 何言ってんだ、このボケ老人がっ!? おまえなんか背負ったら、変な臭いが付くだろうがっ!

「我慢して下さい。 痛いのは私も同じです。 それに先生を背負ってて、あの男が襲ってきたら、対応ができなくなります。 ここはご自分の力で歩いていただくのがベストです」とは言うものの、象山院のペースが遅ければ、能見のペースも遅くならざる得ない。

いっそ、この老人を置いてあの男のスケープゴートにするか? どうせ何年も生きられないだろうし、寝たきりにでもなったら、寅子さんに迷惑がかかる。 当人もそれを望んではいないだろう。

生命の危機的状況に瀕しているのだ、依頼人のために殉職するなど、愚の骨頂もいいところである。

こんなところで死んでたまるかよ!

何の逡巡もなく、象山院をスナイパーに献上する決心がついた。 スケープゴート計画発動である。

「私にいい案があります。 もしあの男が、壬生や滑川を突破したときのことを想定すると、先生が一緒にいては危害が及び兼ねません。 最悪な展開を迎えない内に、先に寅子さんの家に避難しておいて下さい。 それから私もすぐに追い付きます」

「えっ!? しかし、きゃつはおまえ一人では歯が立たんのだろう?」

護衛者から突拍子もない提案を出され、気が気ではないといった様相だ。

「心配には及びません。 壬生や滑川を突破したら、どんな手練れでも無傷では済まないはずです。 手負いなら、あの男など私一人で十分です」

「何とも頼もしい言葉だな。 分かった。 そういうことなら、先に行って待っとるぞ」

そう言うや否や、歩行速度以下の走りで寅子邸を目指す。

自身にとって、プラスになる言葉なら何でも受け入れる。

「くれぐれもお気を付け下さい!」くれぐれもね。 歩み去る老議員の後姿を見ながら、笑みを浮かべる。

行ったか。 あとは遠回りして寅子邸に行き、象山院が暗殺されたと訃報を伝えればいい。 ここにも暗殺者が来ると不安を煽り、寅次郎の車で避難すれば全てが終わる。

あの歩みだ、どんなに遠回りしても、能見より先に着くことはなかろう。 万が一、象山院が生きているようなことがあったら、この手で引導を渡してくれよう。

さて、そろそろ行くか。 象山院の姿が見えなくなるのを確認し、歩を進める。

「作戦会議は終わったのか?」

スナイパー登場である。

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