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伝説のスナイパー  作者: まこと
154/162

No.154

「ここはやはり正攻法として、スーパーか駅に逃げた方がいいんじゃないのか? 寅子の家に逃げたら、それこそ袋のネズミだぞ」

能見の退避経路に疑問を感じた象山院が、別経路を促す。

はあ、これだから素人は・・・ 怒りから、思わずため息が漏れる。

「いいですか? 先ほども申し上げたように、人目に付く場所より、相手の裏を欠いて寅子さんの家に行くことが、最も安全な策なんです。 そして寅次郎さんの車で、ここを離れれば全てが丸く収まります」

「しかし、よくよく考えてみたら人目に付く場所に行った方が、きゃつも狙って来んのではないかと思うんだが、どうだろうか? ワシ、何か間違ったことを言っておるか?」

は? 何言ってやがるんだ、この死に損ないのボケ老人がっ! 手前勝手に動かれちゃ、たまったもんじゃないんだよ!

「先生はどうも、ご自身の立場というものを、よくご理解なさっていないようですね。 先生は暗殺者ですか? 護衛者ですか? 違いますね。 この国の舵を取る聖導者ですよね。 我々には、我々にしか分からない駆け引きが存在するんです。 相手の裏の裏の裏、そのまた裏を欠いて先生をお護りしなければなりません。 素人判断の甘い考えで行動されますと、二人とも命を落とす結果になり兼ねません。 ですから、今後も引き続き私が主導権を握らせていただきます」

有無を言わさぬ口調で、死に損ないの老議員を萎縮させる。

「わ、分かった・・・ 余計な口出ししてすまんかった・・・」

ふん、こんな奴に主導権を渡して、無駄死になんかしてられるかよ。

スナイパーに狙われたが最後、衆人環視の中に逃げ込もうが、邸宅に逃げ込もうが、無駄であることは目に見えている。 能見もそれを、本能的に悟っての退避行動であった。

寅子さんに逢うまでは、何が何でも生き延びてやるっ!


この若き護衛者は、象山院の愛娘、寅子に恋をしているのだ。

初めて寅子と逢った日のことを、今でも鮮明に覚えていた。

半年前の桜も満開を迎える穏やかな陽気の頃、象山院の護衛依頼を引き受け、郊外の邸宅に赴いた。 その時対応に出たのが寅子だった。

寅子はその名に削ぐわず、愚男共を惑わす妖艶さと、少女のようなあどけなさを兼ね備えた美女である。

能見は、象山院の秘書という名目で伝わっていた。 政治の世界は全くの門外漢だが、それは議員の娘である寅子とて同様であった。

恋愛経験に乏しい青年が、人妻の色香に惹かれ、恋心を抱くのにそう時間はかからなかった。 気付けばいつも寅子のことばかり考えていた。

問題点といえば、既婚であること、不倫相手の存在、そして両者の年齢差である。 この時、能見は二十七歳、寅子四十歳、二人の年齢差は実に十三歳差。 許容範囲ギリギリといったところか。

そして、次に気になり出すのが、好敵手の存在である。

能見以外の三人は、幸いにも寅子に特別な関心など抱いておらず、むしろ護衛後の風俗通いに、高い関心を示しているほどであった。

これで邪魔する奴はいないぞ! 寅子は俺のものだ!

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