No.151
ガーンッ! 一発目、被弾せず。
ガーンッ! 二発目、被弾せず。
死の弾丸がスナイパーを捉えるも、そのスナイパーは、視野の狭いスターライトスコープ越しの狙撃手の反応を超える速度で、左右に回避していた。
ガーンッ! またもや被弾せず。
近距離なら、アサルトライフルでも正確無比な狙撃を実現させてきた滑川だが、今夜の相手はあの伝説のスナイパーである。
な、なんだよ・・・ なんなんだよ、あいつ! ほんとに人間なのかっ!? 全然当たらないっ!
滑川は、スナイパーに撃ち込んだ弾丸が事ごとく躱され、驚愕の色を隠せずにいた。
焦りは実力を半減させる。 だが、それも無理からぬことである。
今まで秒速900m/sを超える弾丸を、回避できる者などいなかったのだ。 このイレギュラーな事態に、正確無比な狙撃にも狂いが生じ始めてきた。
ガガガガッ!
フルオートに切り替えるも効果なし。
「ちくしょう! なんで当たらないんだよっ!?」
当然である。 いくら反動が少ない5.56mm弾でも、フルオートで撃てば、200メートル先の標的への着弾は、大きくバラつく。
「ふーっ、あともう少しは近づけそうだな」
砲煙弾雨の中、この幸運がいつまでも続かぬと判断したスナイパーは、雑居ビルの物陰に退避した。
この時、滑川との距離は120メートルにまで迫っていた。
ここからは、フルオートでも着弾のバラつきが減少し、被弾する可能性が高くなる距離である。 左右に回避しながら近づいても、60メートルまでが限界であろう。
その後はどうする? 射程距離外からのロングショットをもう一度実現させるか? 無理だ。 奇跡を信じられるほどの距離ではないし、M36の弾丸は残り2発。 能見戦のために、温存しておかなければならない。
思案するスナイパーの目に、ある物が飛び込んできた。
長さ1メートル強の、先端が尖った鉄製の柵である。 目の前にある完成間近の、洋館風ビルのフェンスに使う資材だろうか。
「これだ!」
その中の一つを手に取り、つぶさに検分する。
鉄柵長1.63メートル、直径10ミリ、重量920グラム。 強度申し分なし。
「悪くない。 これならいけそうだ」
愛銃の代わりに、鉄柵を右手に持ち、再び滑川の前に現れ、走り出す。
「やっと出てきたか。 今度こそ撃ち殺してやるからな! ん? あんな棒切れなんか持って、何しようとしてるんだ? まあ、いいさ!」
再び接近させまいと、狙いを定め、トリガーを引く。
ガガッ! ガガッ!
被弾せず!
被弾せず!!
被弾せず!!!
被弾せず!!!!
相変わらず被弾しないものの、距離を詰めれば詰めるほど、集弾性が向上してきている。