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伝説のスナイパー  作者: まこと
15/162

No.15

霧雨から、次第に本降りになってきた。

誰もいない路地を徘徊するスナイパーは、すっかり疲弊しきっていた。

計画が全て失敗に終わり、素人だと判断した男が同じプロだった・・・

挙句、車に追い回され全力で走り、銃弾まで避けた。

そして何よりの不運は、やはり愛銃に裏切られたことであろう。

「ちくしょう! なんで弾が出なかったんだっ!? どうなってんだ、これっ!?」

無理もない。 これはスナイパーの悲しき習性と言えよう。

銃は手の届く範囲へ。 シャワーを浴びるときにも銃を所持する。 そして今の東京は連日不快指数100%を超える梅雨時期、懐のガンホルスターに銃をしまっても汗で蒸れ、一日中水分のある所に晒されている状態である。 要するに、弾丸の火薬が湿気っていたのだ。

アメリカ育ちのスナイパーにとっては、知る由もないことだろう。

「こんな役に立たないものなんて誰が使うかよっ!」

暗殺稼業に足を踏み入れ、恩師から受け継いだ銃。 十数年間大切にし、片時も手放したことのない愛銃を投げ捨てた。

パンッ!

「うおっ!」銃が暴発し、スナイパーの頬を掠めた。

バチが当たったのだ。

「こんな時に出るなよっ!」気がつけば泣いていた。

慣れない風土。 判断ミス。 様々な要因が重なり、更に不運を招いた。

「もうやだっ! アメリカに帰りてぇよ!」

すっかりホームシックに罹っているようである。

雨の降る夜にコートを着た外人が泣き喚いている、実に奇妙な光景と言えよう。

愛銃に辛く当たった自分が許せないのか、粗末に扱われた愛銃が憐れなのか、はたまたその両方なのか判断が付かず濡れたアスファルトに突っ伏した。

「くそぉ! なんでだよ! なんでこの国の人間は俺に冷たく当たるんだよぉ・・・ 俺が一体何をしたと言うんだよっ」

犯罪である。 犯罪者を野放しにする国など、どこにもないのだ。

雨音だけが響く中、スナイパーは力なく立ち上がり、失意に打ちひしがれながら、深夜の街へと消えていった・・・

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