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伝説のスナイパー  作者: まこと
146/162

No.146

能見によって、無惨に握りつぶされた携帯電話を見ながら、恐怖とも憤怒とも形容しがたい感情が溢れ、理論的思考が働かずにいた。

「あ、あ・・・ あ、な、な何てことしてくれるんだっ! せっかく助けを呼ぼうとしたんだぞ!」

「どちらにしても無駄ですよ。 いくら大勢の警官が来たところで、あの男なら千人の包囲網すら切り抜けることは可能でしょう。 今回も襲撃が未遂に終わり、逃げれられたとしたら、園山が依頼人であることが分からず、また新たな刺客を待ち受けねばなりません。 まあ、それも、先生がシャバにいれたらの話ですけど。 下手したら、刑務所内で刺客に始末されるかもしれません。その時には私達護衛は付きませんので、ご自身で身の安全を確保なさって下さい」能見が不敵な笑みを浮かべる。

「ど、どういうことだっ!? お前達が服役するなら納得できるが、なぜワシが刑務所に入らねばならんのだ?」

自身に落ち度がない事を確認したが、能見の笑みに不安を覚える。

「私達が捕まり、先生との関係性を供述したら、先生にも何らかの刑事処罰が待ってることでしょう。 刺客の殺害指示、これはもう立派な犯罪です、重罪ですよ」

圧倒的優位な立場から、老議員を恫喝する。 裏切り行為を働く依頼人は、誰であろうと決して許さない。

これにはぐうの音も出なかった。

今まで象山院は五度、園山による刺客から襲撃を受けている。 たが、そのいずれも、能見達により撃退されてきた。 刺客の生殺与奪の権限は、全て能見達に委ねていた。 その結果、射殺三、刺客自身による服毒死二、警察に何を供述しようと信憑性は薄く、五人もの殺害に関与したのだ、殺人示唆は免れない。

死刑が妥当であろう。 刺客の襲撃を恐れるまでもない。

能見の思惑を理解した象山院は、ただ項垂れるしかなった。

「ご理解していただけましたか? 我々は一蓮托生、先生お一人だけ抜けがけすることは許されません」

「分かった・・・ 警察に通報するのは止そう・・・」

最良だと思われていた策が、その実、自身にとって最もハイリスクな悪策だとは、思いもよらなかった。

「寅子の家も駄目、警察も駄目となったら、どこに行けばいいんだ?」

「あの男は我々が警察にも通報出来ず、寅子さんの家にも行けないと思っているはず。 そして行き着く所と言えば、衆人環視が集まり防犯カメラのある駅か、スーパーではないかと。 そこで我々は相手の裏をかき、敢えて寅子さんの家に行きます」

「賛成だ。 ワシは元々、寅美にプレゼントを渡しに行くつもりだったからな」孫へのプレゼント箱を掲げる。

プレゼントの用をなさない壊れ果てた箱を、誇らしげに掲げる老議員の姿がよほど滑稽だったのだろう。 気が付けば、能見は声を出して笑っていた。

「おまえ、何笑ってんだっ!?」

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