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伝説のスナイパー  作者: まこと
144/162

No.144

大破したセダンから這い出た能見は、象山院を救出するべく後部座席のドアを開ける。

「さ、先生。 早く行きましょう。 このままだと、あいつに殺されるのは時間の問題です」

「ああ、そんな・・・ 寅美ちゃんにあげるプレゼントが・・・」

「先生、何してるんですかっ! そんな物は放っておいて、急ぎましょう! ここを脱出できれば、いくらでも買えますからっ」

孫の為に厳選したプレゼントに強烈な執着心を抱き、車から離れようとしない象山院に業を煮やした能見は、強引に説得する。

「そんな物とは何だ、そんな物とはっ! これは寅美へのプレゼントなんだぞ! 少しは口を慎まんかっ!」

「阪神タイガースのユニフォームなんかもらっても、誰も喜びやしませんよ。 まして相手は子供でしょう、拒絶されるのが関の山です」

「なんだと! 貴様、ワシのセンスを馬鹿にしとるのかっ! 寅美は虎柄が好きなんだ!」

「阪神タイガースのユニフォームは、虎柄じゃありませんよ」

「う、うるさいっ!」

この土壇場で、論点のずれた会話がひどく滑稽に見える。

「仲間割れは後にしましょう。 今は逃げることが先決です。 それに箱が壊れただけで、中身は無事なはずでしょう」

「そんなもの知っとるわっ!」

怒りに満ちた形相とは裏腹に、セダンから這い出る姿は弱々しい。 最早、そこには老議員の威厳はどこにもなかった。


「あ、あいつら・・・ まだ生きてたのか!?」

猛スピードで樹木に激突し、セダンが大破したのだ、死なぬまでも無事では済むまいと思い込んでいたスナイパーが、セダンから這い出る二人に意識を奪われていた。

「ちっ、逃がすかよ!」

機を逸したが、手負いの獲物に追い付くのは容易である。

スナイパーの超人的な脚力がアスファルトを蹴り、世界記録を塗り替えるダッシュを実現させ、二人を捉える。

ドンッ! その時、側方からの衝撃に視界が揺らぎ転倒した。

な、なんだ? 何が起きたんだ? 何で俺が倒れてるんだっ!?

巨体な影が、スナイパー目がけタックルを喰らわせ、出鼻を挫いたのだ。 思考がこの状況に追い付くまで、数秒を要した。

「誰だっ!」立ち上がるや、不意打ちを受けた突撃者と対峙する。

「伝説のスナイパーって言われてるんだろ? 俺が相手してやるよ」

偉丈夫、壬生の登場である。

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