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伝説のスナイパー  作者: まこと
141/162

No.141

9月14日、午後7時56分。 黄昏時を過ぎた街並みは、夜の顔に変貌を遂げ、欲望を抱えた者達が徘徊する。

酒に溺れる者、性に溺れる者、刺激を求める者。

だが、そのいずれにも属さぬ者達がいた。 象山院 寅太郎の暗殺を実行するスナイパーと、それを阻止する能見サイドである。

スナイパーのターゲット・象山院 寅太郎は、能見が運転するセダンの後部座席に身を預け、孫娘である寅美へのプレゼントを眺め、悦に浸っていた。

今年のプレゼントは、阪神タイガースのユニフォームであった。 野球にいささかの感心もない幼子に拒絶されるのは、火を見るよりも明らかであろう。

かわいい、かわいい寅美ちゃんや。 早く愛くるしい笑顔を、おじいちゃまに見せておくれ。 今度のおじいちゃまのプレゼントはすごいんでちゅよぉ。 じゃーん、阪神タイガースのユニフォームだよぉ! それにしても能見のカスは遠回りなんかしおって、何やっとるんだ? 早く行かないと、寅美が寝てしまうではないか!

自身の命が狙われていようなど、微塵も感じてはいないようである。

「能見、寅子の家なら裏道に入った方が良くないか? これじゃ、遠回りになってしまうぞ」

「申し訳ございません。 先ほども申し上げましたが、今は非常事態です。 多少の遠回りはお許し下さい。 それにこうやって、表通りを走っているのが安全です。 一度裏通りに入ろうものならば、あの男に襲撃されるのは確実でしょう」

「な、何っ、きゃつは今近くにいるのかっ!?」

「はい。 五台後ろ斜めのワゴン車を運転してます。 くれぐれも後ろを振り向かないで下さい。 奴に気付かれたら最後、この場が修羅場と化します」

「あ、ああ・・・ わ、分かった。 お、おまえの言うとおりにする。 だから、無事寅美の元まで連れてってくれっ」恐怖にすくみながら、能見に哀願する。

「かしこまりました」ふっ、思わずほくそ笑む。

これで少しは大人しくなるだろう。

五台後ろ斜めのワゴン車に、スナイパーなどいはしない。 全ては能見の虚言である。

傲慢に振る舞う小心者には必ずこの手口を使う。 虎の威を借る狐ほど、その効果は絶大である。

スナイパーが襲撃するアタックポイントは、おそらく今現在走行しているオフィス街を抜け、寅次郎夫妻が住む新興住宅地の車通りが乏しい一本道であろう。

住宅地にアクセスするには、その道以外はなく、否が応でもそこを通過せねばならない。

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