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伝説のスナイパー  作者: まこと
140/162

No.140

象山院の為に殉職した溝呂木の死を軽んじられ、若き護衛者達は色めき立った。

「ふんっ! 大切な家族? そんな大切な家族にふざけた名前を付けるのも、考えものだと思いますがね」

象山院の軽口に、反応したのは壬生であった。

壬生と溝呂木は、共に秀でた格闘センスを有しており、訓練時は元より、プライベートでも懇意にしていたほどであった。 そんな仲間の死を軽んじられたのだ、黙っていられようはずがない。

「なんだと! 貴様、ワシの家族を侮辱するつもりか!」

「そっちこそ溝呂木を侮辱するな! あいつはあんたの為に死んだんだぞ! 少しは敬意を払ったらどうなんだ!?」

「護衛が、依頼人を護って死ぬのは当然だろう!」

「何っ、許さんぞ!」壬生が必殺の構えを取る。

「ひっ!」象山院が恐怖から防御の構えを取る。

「壬生! 先生に対して失礼だぞ!」能見が憤怒に駆られた壬生を一喝し、殺気を孕んだ目で象山院を睥睨した。

「たしかに私達護衛者は、依頼人を護って死ぬのが本懐です。 ですが、それ以前に溝呂木は私達の大切な仲間でした。 その仲間の死を軽く見られるのは別です。 今後口の聞き方には気をつけていただきたい」

「はいはい、争いはここまで。 二人とも、少しは先生の意見を尊重しなきゃ。 私達は先生をお一人で行かせる、それでよろしいでしょう?」

滑川が象山院の意見に理解を示す。

「あ、ああ、おまえはなかなか物分かりがいいじゃないか。 ただ陰湿な男だと思ってたワシが間違ってたようだ」

壬生と能見に反発され、恐怖に慄いていた象山院が、陰湿男・滑川によって救われた。

「こっちも少し意固地になり過ぎていたようだ。 ここは一つおまえ達の意見を飲んで、一人だけ護衛を付けよう。 能見、おまえが来い」

「はい」能見がほくそ笑んだ。

「おまえなら、寅子も寅美も怯えないだろうからな」

能見は壬生や滑川と違い、周りに好青年の印象を与えていた。 しかし、それは飽くまで表層上に過ぎない。

ここまでは能見サイドの作戦通りである。 象山院に悪条件を強要させ、脅し、救いの手を差し延べ、恩を売り、こちらにとっての好条件を飲ませやすくする。

全ては、交渉術に特化した滑川の功績であると言えよう。

機転を利かせ、飴と鞭を巧みに使いこなし、アドバンテージをこちら側に付ける。 何も情報収集能力にだけ精通している訳ではないのだ。

能見が象山院を護衛し、壬生と滑川が後方支援に回る。 条件付きではあるが、極めて有効的な布陣であると言えよう。

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