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伝説のスナイパー  作者: まこと
137/162

No.137

国会議員・象山院 寅太郎、御年七十六歳。 二十九歳で政界入りを果たして以来、政策協議は他議員に追従し、選挙区の挨拶回りや講演会では無難な内容ばかり。 失態もなければ何の偉業も成し遂げてはいない、日和見主義を地で行く、言わば中堅の中の中堅である。

そんな取るに足らない老議員の命を、脅かす者がいた。

そう、スナイパーの依頼人でもある園山 俊幸である。

そもそもの発端は、象山院の愛娘、寅子と園山が不倫の関係にあった。


その日、象山院は孫娘の寅美を手なずけようと、玩具を買い与える構想を練りながら、車を走らせていた。 政治家は金で釣る、庶民は虚偽公約で釣る、孫は玩具で釣る、まさに政治家の鑑と言えよう。

信号待ちをしている象山院の左隣に車が停まった。 車内には見覚えのある者が二人、寅子と園山が乗っていた。 二人の全世界は車内だけで構築されており、他には何も映らない。

この関係を知らぬ者が見たならば、仲睦まじい恋人同士と思えるだろうが、事態はそんなに穏やかなものではない。

何をやってるんだ、寅子! その男から離れなさい!

もちろん象山院の怒気など、寅子に届こうはずがない。 代わりに園山が怒気を傍受し、隣を見やった。

しょ、象山院先生・・・

象山院の憤怒の形相とは対象的に、園山の顔はみるみる青ざめ萎縮した。


何もかも全て終わりだ・・・

もしこの事実が明るみに出れば、園山の政治家生命は失墜する。 ここまで登り詰めたステータスを、たかが一時の快楽で棄てる訳にはいかない。

目撃者は始末せよ。 昔どこかで聞いたフレーズが頭を過った。

あんな使い物にならない老兵は、ただ消え去るのみでは生温い。 死んでこの世を去ってもらおうではないか。 その方が国民の為にも、次の世代の為にもなるだろう。

ここに園山の自分勝手な思惑を大義名分に、象山院暗殺計画がスタートした。

自身の手を汚さず、殺人を完遂させるには、プロフェッショナルに依頼するのがベストである。

だが、容易に思えるはずだった暗殺は困難を極めた。 園山が雇った刺客を、象山院サイドも護衛を雇い入れ、事ごとく看破された。

このままでは不倫騒動のスキャンダルどころではない、殺人幇助の罪に問われ兼ねない。 園山に焦りの色が見て取れた。

そんな折に、海外で成功率100%を誇る伝説の暗殺者の存在を耳にした。 藁にも縋る思いで、その男とコンタクトを取り依頼した。 一度は未遂に終わったものの、最早後がない園山にとって、その男以外頼る者はいないのだ。

そして今宵、全局面において雌雄を決する日が訪れる。

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