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伝説のスナイパー  作者: まこと
134/162

No.134

スナイパーによる死の平手打ちで、椎名の頬は無惨にも、皮膚が剥がれ落ち、背中の傷と同様に筋繊維が露出した。

「ぷぎーっ、ぷぎーっ!い、痛いっ・・・ 痛いよぉ・・・」

完全復活を遂げたスナイパーの平手打ちは、想像を絶するものであった。 先に喰らった背中の痛みの比ではない。

よし、それほどパワーダウンはしてないようだな。

「おいっ、豚野郎。 俺様に楯突いて殺されなかっただけありがたいと思えや。 次やったら、生まれてきたことを後悔させてやるからな! 分かったかっ、コラァッ!」

「は、はいっ! ま、誠に申し訳ございませんでした。 だだだ旦那さま、どうかお許しをっ!」

痛みと屈辱と恐怖が入り混じった感情を押し留め、地べた額をに擦りつけ必死に許しを乞う。

『物乞いふさ』を視聴していたのが、功を奏したようである。

椎名の顔は、血と汗と涙と洟と涎に彩られていた。 最早、分泌出来るものは、全て出し切った様相であろう。

それを見たスナイパーは満足し、その場を後にした。


スナイパーの打撃をまともに受け、生還した者は一人もおらず、分厚い脂肪に鎧われた椎名だけが、唯一貴重な「生還者」であった。

背中と頬にスタンプされたスナイパーの手痕に希少価値が付き、入手困難な「商品」として各国の好事家が「捕獲権」を争い、椎名がオークションにかけられる事となった。

見事捕獲権を獲得した好事家は、日本に赴き椎名を捕獲した。 その後、保存状態を良好なまま保つ為、剥製にされる運命となったのである。

一円の価値もない人間に、巨額の値が付いた瞬間であった。

これが椎名 恒夫の末路である。


午後4時18分。 気だるい昼下がりには遅く、憂鬱な黄昏時にはまだ早い時間帯に、スナイパーは全ての荷物を始末した。 これで思い残すことは何もない。

約2ヶ月間の滞在だったが、この部屋ではアニメに熱中し、友と語り明かし、少女との蜜月に酔い痴れた。

スナイパーの暗澹たる人生の中で、唯一光明が射した輝かしい瞬間であった。

部屋を見渡している今も、思い出が押し寄せ、涙が溢れてくる。

だが、いつまでも感傷に浸ってはいられない。 これから仕事が待っているのだ、気持ちを切り替えねば生死に関わる。

二度と戻ることのない部屋を出て、灼熱の世界へと歩を進めた。

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