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伝説のスナイパー  作者: まこと
130/162

No.130

「おふさちゃん、ごめんね・・・ 僕はもうだめかもしれないんだ・・・ これ以上、旦那様の拷問に耐えられる自信がないよ・・・」

椎名は、豚の真似で人格を剥奪されたばかりか、背中にはスナイパーの張り手による裂傷が、皮膚を突き破り筋繊維にまで達していた。

屈辱と激痛に見舞われた姿は、まさに満身創痍であった。

それでも今だ、妄想世界から帰還する事も出来ず、眼前で泣き叫んでいるふさに許しを乞いていたのだ。

「頼むよ・・・ 僕のために泣かないでおくれよ・・・ 僕まで悲しくなってくるじゃないか・・・」

一筋の涙が、椎名の醜くたるんだ頬を伝い落ちた。

「こいつ何言ってんだ?」

「さあ。 それにさっきからジミーさんを見て旦那様、旦那様って言ってるようですけどけど・・・」

「豚野郎の考えてることは、よく分からないもんだな」

「ええ。 この人の場合、人付き合いはもちろん、友達すらいなさそうですもんね。 俺達には見えない恋人でもいるんじゃないですかね」

葛原は決して具現化される事のない椎名の妄想世界の恋人、町田 ふさの存在を言い当てた。

「ちっ、どうしようもない変態野郎だな」

自身も少女と出会う前までは、妄想世界の住人であり、具現化とまでは行かずとも、キャリアが遥か上を行く椎名を先んじていたほどであった。

喉元過ぎれば何とやら、今では妄想者を糾弾する立場に身を置いていた。

「あっ、もうこんな時間だ! ごめんなさい、明日早いので今日はこれで失礼させてもらいます」

「なんだよ付き合い悪いな、まだ10時前だぞ。 公務員って、9時から5時までなんだろ? こんな所に俺を置いてくつもりかよ? もう少しだけ飲もうぜ」

ここに来て、有職者と無職者との差が出始めた。

「いくら公務員でも残業くらいはありますよ。 ただ俺の場合は時間帯が不規則なんです」

「へえ、何の仕事をしてるんだ?」

さして関心もないが、聞いておくのが友へ対する通過儀礼だとしても、かつては格下と断じた男へ、素直になるにはまだ抵抗が生じるようである。

「何してると思います?」

なんだこいつ、一丁前にもったい付けるつもりか? どうせ雑用ばかり任されてる下級職員が関の山だろう。

恋に敗れたスナイパーを慰めようと、スケープゴートの椎名まで用立てた葛原を見下す姿勢を崩す事はなかった。

「都庁の職員か何かか?」

「いえいえ、違いますよ」

そう言うや否や、葛原が突然立ち上がり、敬礼をした。

「本官は、市民の安全を守る葛原 大輔巡査であります! 世の中から犯罪者を根絶やしにするのが、本官の務めであります!」

「だ、大輔がポリスメン・・・?」

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