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伝説のスナイパー  作者: まこと
128/162

No.128

「と言う訳なので、ジミーさんを励ますために、今夜はとことん飲もうと思ってます」

葛原は、意気消沈しているスナイパーに代わり、椎名に事情を説明した。

「それは分かったけど、どうして僕の部屋で飲むことになってるの?」

「ジミーさんの部屋だと上に美香さんがいて、少しでも騒ごうものならすぐ苦情をつけるんですよ。 俺の部屋でもまだ近いし、椎名さんの部屋だったら大分離れてるし、安心して騒げるじゃないですか」

「えーっ! そんな理由だけで、僕の部屋を解放しなきゃならないの?」

「なんだ? 何か不服があるようだな。 文句があるなら言ってみろよ」

スナイパーが、不満面の椎名を睨め付ける。 過去、幾人もの罪なき者を殺めてきた殺人者の眼は、社会の落伍者を萎縮させた。

「い、いえっ、滅相もございません。 お許し下さい、旦那様」

妄想世界の住人となり、いつまでも夢見心地の椎名は、スナイパーに財産の使い込みが、いつ発覚するのか戦々恐々としていた。

おかしい・・・ まだ『物乞いふさ』が始まって三週目だぞ。 そんなに早く旦那様に使い込みがバレるはずないのに・・・

「ぉい、おい! 聞いてんのか!」

「はっ、はいっ! な、何でございましょう?」

物思いにふけっていた椎名は、スナイパーの呼び掛けに反応出来ずにいた。

「何でございましょうじゃねぇよ。 これやるから、何か適当に酒でも買ってこい!」

スナイパーが千円札を、椎名に投げ付ける。

「え、あの、お酒の銘柄がよく分からないので、どういったものを買って来ればいいんでしょうか?」

「おまえお得意のシャトーマルゴーでも買って来いよ! 足りない分は、てめえで払っとけ」

「そ、そそそんなご無体な・・・ 旦那様、どうかご慈悲の心を・・・」

シャトーマルゴーの相場が分からない椎名であっても、千円紙幣一枚で買えるほど安価な物ではないことは十分認識出来ていた。

「冗談に決まってるだろ。 バーボンでも買って来い」

「あ、それからビールとおつまみもお願いします」

「は、はい、かしこまりました」

それだけ言うと一礼し、部屋から出て行った。


「ただいま帰りました」

椎名が購入して来た商品を閲覧した二人は、憤怒の形相に変わった。

「おい、このデブ! 俺はバーボンって言ったんだぞ! 誰がブランデー買って来いって言ったんだ?」

「えっ、も、申し訳ございません」

「これビールじゃなく、発泡酒ですよ。 何で間違えるんですか」

「お、お許し下さい!」

「ちっ、おまえに頼んだ俺達が馬鹿だったよ。 ただ肥ってるだけでほんとに使えねえ奴だな」

「ジミーさん、そこまで言ったら椎名さんが気の毒ですよ」

い、今だけは耐えなきゃ。 僕がいなければ、おふさちゃんが飢え死にしちゃうじゃないか・・・

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