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伝説のスナイパー  作者: まこと
126/162

No.126

文字が読めないスナイパーに代わり、葛原が読み聞かせた少女の手記は便箋三枚に渡り、スナイパーへ対する想いが切々と綴られていた。

「こんなのって・・・ こんなのってありかよっ! 年なんて関係ないじゃないか・・・」

少女からの、別れの手紙を読み聞かされている中で、葛原の目も気にせず涙を流し続けていた。

スナイパーの好敵手は、皮肉にも自身の支配下にある肉体であった。

「ジミーさん・・・ 元気出してくださいよ。 これは誰が悪いわけでもないですって」

傍観者である葛原には、恋に敗れたスナイパーなどどうでも良く、慰めになっていない言葉を投げかけるだけに留めておいた。

「元気出せって簡単に言うけど、具体的にどうすればいいんだよ? 今すぐやってみるから教えてくれよ! そうやって他人事みたいに、いい加減なこと言って傷口拡げるのはやめてくれよな!」

何を言ったところで、しょせんは他人事である。

自暴自棄なスナイパーは、親切に手紙を読み聞かせた罪なき葛原に怒りをぶつける事で、精神のバランスを保とうとしていたのだ。

恩を仇で返すとは、まさにこの事である。

「少しは気が済みましたか。 悲しいときには、そうやって感情をぶつけるのが一番ですよ」

「俺さ・・・ 人を好きになったの、これが初めてなんだ・・・ 今まで娼婦ばかり相手にしてきて、こんなに胸が苦しくて、幸せな気持ちになったことなんてなかったんだ・・・」

とうを過ぎた中年男が、涙ながらに青くさい戯言を吐き出す姿は、滑稽以外の何者でもない。

「初恋ってやつですね。 ジミーさんの年で、そんな素敵な恋に出会えるなんて滅多にないことですよ。 しかも今どき手紙をくれるなんて、いい子じゃないですか。 俺もこんな手紙をもらってみたいもんですよ」

葛原が、愚にもつかぬおべんちゃらを並べ立てる。 誰しも別れの手紙など、欲しがろうはすがない。

しかし、これほどまでに人の手紙が面白いとは。 もし手紙をもらうようなことがあっても、誰にも読まれないように、読み書きの勉強をしておかないと!

葛原が笑いを堪えようと、肩を震わせ俯いた。

「大輔、俺のために泣くなよ。 俺はそんなつもりで、手紙を読んでもらったんじゃないんだよ」

くっ、この人、何を勘違いしてるんだ? 頼むから、これ以上俺に話しかけないでくれよっ!

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