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伝説のスナイパー  作者: まこと
125/162

No.125

午後8時16分。 下町アパート105号室。

地方都市から上京して早五ヶ月、策士・葛原は大都会の生活にも馴染みの色を漂わせていた。

個性は強烈だが、アパートの住人にも恵まれ、念願だった恋人もできた。 今まさに順風満帆な一人暮らしを謳歌していた。

ピンポーン!

誰だ? ジミーさんにしては早いな。

スナイパーが葛原の部屋を訪れるのは、午後11時過ぎであってた。

もしかして琴江!? あいつ、部屋に来るときは前もって電話しろって言っておいたのに、ほんとに困ったやつだな。 昨日会ったばかりなのに、もう俺に会いたくなったのか。

恋にほだされた哀れな男が、喜び勇んで開けた扉の先には、涙に濡れたスナイパーが立っていた。

うわっ、ジミーさんだったか・・・

葛原の期待は、虚しく空を切る結果となった。

「ジ、ジミーさん! どうしたんですか? 涙なんか流しちゃって」

「大輔・・・ 俺、字が読めないんだ。 手紙を読んでくれないか?」

「えっ、手紙?」


『ジミーさまへ

何から書いていいのか分かりませんが、まずはあなたに謝らなければならないことがあります。

あなたも薄々は察しているとは思いますが、私は高校在学中の未成年者なんです。 今まで隠していたご無礼を、お許しください。

あの日、大人の恋愛にあこがれていた私達は、不安を抱えながら静江に誘われ従いて行った合コンの場で、あなたに出会いました。

そして、一目であなたに私の全てが奪われていくのが分かりました。 気が付けばあなたに恋をしてました。

身分を偽ってのデートは、非常に楽しくもあり、心苦しくもありました。 次逢ったときには本当のことを打ち明けよう、いや、今日だけは神様に見逃してもらって、明日こそ真実を告げよう、そのうちズルズルと時間だけが過ぎていきました。

もう自分では引き返せない場所まで来たのだと実感しました。 それと同時に、気付いたこともありました。 私はあなたに恋をしていたのではなく、あなたの筋肉に恋をしていたのです。

その事実に気づいても、あなたに申し訳ないと思いつつも、逢わずにはいられなくなっていました。

もしあの時、あなたに私の制服姿を見られていなければ、そのまま交際を続けていたことでしょう。

お互いにとって、今が一番いい機会なのかもしれませんね。 さびしいけど、ここでお別れしましょう。

ひと月にも満たない短い間だったけど、何よりも誰よりも幸せでした。

ジミーさん、さよなら。

今までありがとうございました。

絹江より』

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