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伝説のスナイパー  作者: まこと
122/162

No.122

護衛者・能見との邂逅により、平穏な日常から一転、闇の世界に足を引きずられそうになる。

再び陽の当たる世界に這い上がろうと、頼みの綱である少女に逢瀬を要求したが、級友の自殺を思い留まらせるとの理由で、敢え無く撃沈。

そのまま帰宅する気にもなれず、当て所なく街を徘徊していた。

「ちくしょう、今日は散々な一日だったな・・・」誰にともなく呟く。

だがスナイパーの受難は、これだけに留まらなかった。

午後4時31分。 通常ならば、この時間帯には少女と書店に立ち寄り、平面上に写るボディビルダー達の肉体をつぶさに観察し、少女が筋肉の出来映えを揶揄する脇で、機嫌を損なわせまいと平身低頭で追従しているはずだった。 だが現実は一人、街中を徘徊しているだけであった。

と、そこへスナイパーの想い人、腰元 絹江が似非ダンスグループのメンバーと共に、姿を現した。

「あっ、ジミーさん・・・」先にスナイパーの存在に気付いたのは絹江であった。

まずい・・・ 何でよりによってこんな所にジミーさんがいるの!?

ここは厓円高校周辺。 折悪しく今は下校途中、少女達は学校指定の純白の制服に身を包んでいた。

絹江はスナイパーに社会人であると偽り、擬似交際を続けていた。 そして今、その社会人と言う擬態が、スナイパーに露呈してしまったのだ。

「絹江ちゃん!」

愚鈍なスナイパーも、絹江達の存在に気付いたようである。

「おや、噂をすれば何とやら。 マッチョな彼氏さんじゃないかい。 こんちは、元気だったかい?」

開口一番、静江が横柄な態度でスナイパーに挨拶をする。

どうせまともなルートで入国したんじゃないんだろう? 絹江には悪いけど、密入国者には、これくらいの扱いで十分ってもんだよ。

静江が勝手に判断したスナイパーの素性は、ほぼ的を得ていた。

「あ、ジミーさんだ。 こんにちは」

「ごきげんよう」

静江に倣い、道江も琴江も会釈をする。

「こんにちは。 みんなお揃いみたいで。 あれ? それは会社の制服? じゃないよね・・・?」

スナイパーが、欺瞞の目を少女達に向ける。

「ジ、ジミーさん、ごめんなさい!」

そう言うや否や、絹江は純白な制服をひるがえし、全力でスナイパーの元から走り去って行った。

残されたのは、気まずさの余り俯く少女達、そして呆然と立ち尽くすスナイパー。

何も考えられない時間だけが、そこにあった。

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