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伝説のスナイパー  作者: まこと
121/162

No.121

「うん。 そう、静江と道江が失恋して、思い詰めた顔して、今にも自殺しそうなんです。 だから、今日はあたしと琴江が従いててあげないと。 うん、えっ! どんな死にを方するかって? うーん、どうだろう? 顔見ただけじゃ、分かりませんよ。 ええ、明日は必ず会えます。 ジミーさん、今日だけはほんとにごめんなさい! うん、じゃあ」

事の顛末を、逢瀬に赴けと愚図るスナイパーに説明し、半ば無理矢理に通話を遮断した。

「ふんっ! 何だい何だい、なんて女々しい男なんだい。 女の子が会えないって言ってるんだから、察してあげるのが男ってもんじゃないのかい!」

今にも自殺しそうな静江が、スナイパーの対応に腹を立て始めた。

「ちょっと! 調子に乗らないでよね! 誰のせいで、こんなくさい三文芝居打ったと思ってるのよっ? 静江と道江が、このままだと線路に飛び込んで死んでやるって、脅してきたんでしょう!」

線路内への飛び込み自殺は、凄惨を極める。 軋轢により四肢は、車両と線路に挟まれバラバラに、臓腑は衝撃により飛び散る結果となる。 後には、数秒前まで「生」を宿していた肉体の残滓のみ、それでお終いである。

一女子高校生が目撃するには、あまりに刺激が強過ぎると言えよう。

「あたし今日はいっぱい食べて、いっぱい歌いたい気分」

自ら自殺を仄めかしていた道江が、死とは対局に位置する娯楽を要求する。

「おや、道江にしては珍しいこと言うじゃないか。 歌いたいだなんて、あたいも同じ気分だよ。 デーモンズで盛り上がるよ!」

失恋直後の悲痛はどこへやら、最早二人に死ぬ気はさらさらないようである。


失恋の痛手から、静江と道江の狂言自殺による騒動で、被害をこうむったのは、何も絹江と琴江だけとは限らなかった。 スナイパーもその一人である事に、疑いようの余地もなかった。

「ちくしょう! 絹江の奴、何で俺と会ってくれないんだよ! あんな奴等、死のうが生きようがどっちでもいいじゃないかよ!」

人命より、自身の欲望を優先させるあたりに、スナイパーの傲慢さが窺い知る事が出来る。 事実、スナイパーには、人命など皆無に等しかった。 この世に生を受けてから、ただの一度も命の尊さを学んだ事がなかったのだ。

そんな男に、命の重要性を説き伏せたところで、理解し得るはずがない。

環境が変われば価値観も変わるとはよく言ったものである。

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