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伝説のスナイパー  作者: まこと
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No.12

国会議員の一日は多忙を極める。 それは象山院 寅太郎の一日とて、例外ではない。

委員会の質疑応答から本会議への出席、自身の街頭演説を行いながら、議員仲間の応援に駆けつけることもある。

「政治家は知力よりまず体力」だと言う者までいるくらいだ。

象山院はそれほど熱心に政治活動を行っているわけではないが、やはり死にゆく手前の老体には堪える激務であることには変わりない。


スナイパーの仕事はターゲットを捕捉して即殺ではなく、ターゲットのスケジュールやライフサイクル、背後関係をすべて調べ上げる。 そして、最もベストなスナイピングポイントを探し出すのだ。

調査に費やす期間は、せいぜいが一週間、長くて二週間以上に及ぶこともある。

心霊騒動の翌日、ホテルを出たスナイパーは立地条件が同じ東横インを探し出した。 新しいホテルでは心霊現象に悩まされることはなかった。 まさに心機一転である。

そして、コートやカーゴパンツのポケットの中には水やパン、ソーセージが詰め込まれていた。 水分と栄養をこまめに摂る、熱中症で倒れたからこその配慮である。

ただコートを脱げばいいだけなのだが、スナイパーにはそんな思考は持ち合わせてはいなかった。


象山院には、常に四人の秘書が従いている。

規格外な巨躯の男が二人、長身痩躯の男が一人。 この三人は、所作から護衛者だということが見て取れた。 残りの好青年な男が、本物の秘書といったところか。

スーツの膨らみから、みんな拳銃を所持している。 議員が護衛を付けるということは、それほど重要な「何か」を持っていることに他ならない。 あるいは、自身が命を狙われているのを知ってるのか・・・

おそらくは後者のほうだろう。

その証拠に今日で尾行は三日目を迎えるが、護衛者達がなかなか隙を見せない。

よほど訓練を積んでいるのだろう、一糸乱れぬ統制が取れた動きである。 だが、そんな手練れ達にも必ず「意識のズレ」が生じる。 そのチャンスを突けばターゲットを攻略できるのだ。


そのチャンスとは議員同士の会合である。 護衛者達にも秘書という肩書きがある。

帰りに他の議員にあいさつをして車に戻るまでの約十数秒間、その間は統制が取れずバラバラになるのだ。 狙うとしたら、その瞬間である。

そして、次回の大きな会合は五日後。

チャンスはその日しかないだろう。

それを逃せばもうチャンスは二度と訪れない、失敗は許されないのだ。


そして、五日後の7月4日。 午後11時。

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