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伝説のスナイパー  作者: まこと
119/162

No.119

如何に残虐非道の琴江と言えども、泣き崩れた級友の憐れな姿には、さすがに胸を打たれたようである。

「静江、道江、私が言うのも変だけど、元気出して。 何も男は葛原さんだけじゃない、視野を拡げてみなさい。 世の中は出会いで溢れているのよ」

どこぞの啓発書から拾い読みした一節を、傷心している二人の少女に言い聞かせる。

「そうだよ、琴江の言う通り出会いなんて、そこら中に転がってるよ。 あっ、そうだ! あたしがよく見学に行くジムがあるんだけど、そこの人達と合コンしようか?」

「いい、遠慮しとく。 絹江が紹介する人なんて、どうせ筋肉だけが取り柄の、やたら黒いゴリラマッチョみたいなおっさんばかりなんだろう。 お酒の代わりにプロテインしか飲まないような奴に、あたいの傷付いた心を慰めて欲しくないってもんだよ!」

絹江は何も反論出来ずにいた。 静江の言葉に、ボディビルの全てが集約されていたからだった。

「そうよ、人の失恋話には耳を貸さないで、筋肉とトレーニングの話ばかりしてそうだもん!」

道江にも、ことごとく図星を突かれる。 二人が抱いているボディビルダーへの先入観は、概ね的を得ていた。

「そんな・・・ あたしはただ、二人に元気になって欲しかっただけなのに・・・」

「絹江。 気の毒だけど、今はマッチョは受け入れられない時代なのよ。

もちろん絹江みたいな女の子もいるから、そうだとは断言出来ないけど、極めて少数派の部類に入ることは確かね」

静江、道江に続いて、最後に琴江が絹江に引導を渡す。

「ふんっ、そんなもので話をすげ替えないで欲しいもんだよ! これだからO型の女は、腹黒の泥棒猫しかいないんだよ」

O型である琴江を、これ見よがしに我が国を代表する占星術「血液型占い」を持ち出し、罵倒する。

「えっ、あたしも腹黒の泥棒猫なのっ!?」絹江もO型であった。

「絹江は、人間関係を大切にする良い方のO型だから大丈夫さ。 あたいは腹黒くて計算高い、誰かさんみたいな悪い方のO型のことを言ってたんだよ!」

「あほくさ。 何を言うのかと思えば血液型占いだなんて、とても先進国に住む人間の考えとは思えない発言ね」

琴江が憐れみの表情から一変、蔑みの表情で静江を見下す。

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