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伝説のスナイパー  作者: まこと
118/162

No.118

「道江にしては、いいこと言うじゃないか! どれ、早速葛原君に電話して、あんたの化けの皮を剥がしてやるからね、覚悟おし!」

そう言うや否や、静江が携帯電話を取り出し、葛原に着信を入れる。

「どうぞ、お好きに。 電話するだけ無駄だと思うけど」

「そんなの分かんないじゃない! 葛原さんはあたしのことが好きなの! 琴江や静江じゃなく、あたしに微笑んでくれると信じてるもん!」

黙って静江と琴江のやり取りを見守っていた道江も、その実、葛原の本心が気掛かりで仕方がないのだ。

静江と琴江を出し抜き、意中の相手は自身であると、葛原に宣言して欲しいのである。

「あんな筋肉のない人の、どこにそんな魅力があるのかしら? 世の中、不思議なことでいっぱいね」

筋肉至上主義である絹江には、理解し難い難解なテーマである。

琴江は、十近くも離れた葛原とのアバンチュールな逢瀬に夢中になったいた。 それは禁断の果実をもぎ取る行為にも似て、背徳心から世界中を敵に回した悲劇のヒロインと言う、思春期にありがちな妄想に囚われた。

残虐非道の琴江と言えど、恋を前にしては、盲目な少女にならざる得なかったのだ。

「あ、繋がった! もしもし、葛原君、こんにちは。 いや、なに大したことじゃないよ。 ちょいと葛原君の声が聞きたいと思って電話しただけなのさ」

葛原との通話中も、静江は絶えず琴江を意識し、睥睨している。

「突然で何だけどさ、葛原君はあたい達のことをどう思ってるんだい? うん・・・ うん、じゃあ、聞くまでもないと思うけど、葛原君は誰に一番好意を持ってるんだい? えっ、あんだってまた!? ・・・何でなんだい? 何でよりによって琴江なんだい・・・ あたいの胸やお尻を触ってたのは、何だったんだい? あれは遊びだったのかい?」

結果を聞くまでもなく、静江の通話反応から琴江に軍配が上がったのは明確である。

通話を終え、意気消沈した静江がうなだれ、泣き崩れた。

「何で琴江なんだい? 何であたいじゃないんだ! くそっ、こうなったら死んで化けて出てやる! 悪霊になって、葛原君を一生恨み抜いてやるよっ!」

失恋如きで取り憑かれたのでは、世界規模で精神に異常を来たした者達が、溢れる事だろう。

「まだ葛原さんに告白もしてないのに、こんな終わり方ってないよ・・・ やっとだよ、やっと食べ物以外で、初めて好きになれた人なのに・・・ あたしが恋しちゃいけなかったのかな・・・」

道江も肩を震わせ泣き崩れる。

恋のライバルを前にして、自身の感情を恥ずかし気もなく曝け出す。

若さとは、青春とは、かくも美しいものである。

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