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伝説のスナイパー  作者: まこと
113/162

No.113

「依頼人の名を、口にしないのはプロとして当然だが、別にとぼける必要はないさ。 あいつが園山に殺されるって、神経過敏になって周りに喚き散らしてるくらいだからな」

いくら現役を引退したとは言え、まだプロとしての意識が残っているスナイパーにとって、不利益な情報である事には間違いない。 早々にターゲットを始末しておかないと、警察に介入されたら、暗殺のチャンスは永遠に訪れる事はないと言えよう。

「自分のボスに対して、随分ぞんざいな言い方をするんだな。 主従関係がなってないのか? 統制の執れない組織はすぐに瓦解するぞ」

「あいつは単なる護衛対象者だ。 あんたみたいな刺客から、命を護る契約を結んでるだけだ」

「そもそもなぜ園山って男は、象山院の命を狙ってるんだ?」

「やはり依頼人は園山だったのか」

「お前は何を勘違いしてるんだ? そんな奴は知らんと言ってるだろう」

「取り繕ってももう遅い。 俺は一言も園山が男だと言ってないぞ」

「あっ!」堪え切れず、声が漏れてしまった。 自らボロを出し、墓穴を掘った。 スナイパー・ジミー、完全にプロ失格である。

「まあ、いいさ。 依頼人が分かった所で、あんたは象山院を殺すことには変わりないんだろう」

「い、いや、ちょっと待ってくれ。 俺はもう暗殺は・・・」

「あんた、園山から依頼内容を聞かずに引き受けたのか? もしこれが罠だとしたら、どうするつりだったんだ?」

「お前もしつこい奴だな。 俺はそんな奴から依頼された覚えはないと言ってるだろう」

無駄だと知りつつも、園山との関係性を否定しようと意を唱える。

「今さら何をどう言おうと遅いぞ」

案の定、無駄であった。

「だが、まあいいだろう、なぜ園山が象山院の命を狙っているかだったな? 教えてやるよ。 園山は、象山院の娘と不倫の関係にあったんだ。 お互い家庭があっての不倫関係だったらしい。 園山と娘の密会現場を象山院に見つかり、弱みを握られているんだが、そこで黙っていないのが園山だった。 何回か事故に見せかけて象山院を殺そうとした事もあったが、俺達が雇われたことによって、今回はあんたみたいな凄腕のプロを起用したと言う訳だ」

「いいのか? そんな大事なことをべらべら喋っても」

「ふっ、何の影響もないさ。 あんたは、あと四日後に俺達に殺されるんだからな。 せいぜい残された時間を、悔いのないように過ごしな」

能見は腑抜けたスナイパーに無防備にも背を向け、昼下がりの公園を後にした。

行くはずないだろうが。 俺は暗殺業を辞めて絹江と一緒になるんだ。

しかし、スナイパーは能見との邂逅によって、暗殺者に戻りつつある自分を感じていた。

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