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伝説のスナイパー  作者: まこと
107/162

No.107

さっきからずっと聞いてれば、筋肉の話ばかりだな。 他に何か話題はないのか? この子、もしかしたら俺の正体が分かっても、全く気にしないんじゃないのか? さり気なく聞いてみるか。

安易な考えに陥ったスナイパーは、最も危険なタブーに触れようとしていた。

「ね、もしもだよ、もしも絹江ちゃんと付き合っている人が、殺人犯だと分かったらどうする?」

さり気なく聞くどころか、これではまるで自身の正体を、露呈している様なものである。

「え? それって、ジミーさんが殺人犯だってこと?」

いきなりの核心を突かれ、全身に汗が噴き出した。 安易な考えで発言した結果がこれである。

「い、いや俺じゃなくて、その、別な誰かと付き合ったとしたらだよ」

「んー、そうね、あたしだったら、その人に自首を勧めるかな。 過ちは誰にでもあるし、出所したらまた改めて付き合うかも」

一途な少女は「待つ女」に徹するようだが、事態はそんなに甘くはない。

いくら生活の糧を得るとはいえ、数百人もの罪なき市民を殺害し続けてきたスナイパーが、法の裁きを受けようものならば、情状酌量の余地もなく即座に死刑台送りとなるであろう。

その後の交際は、来世まで持ち越しである。

「あ、でもその殺人犯がジミーさんなら、あたしきっと黙ってると思う」

「ん、それはどうしてなの?」期待に胸を高め聞いてみる。

「だってジミーさんの筋肉すごいんだもの。 こんなにすごい人が側にいないなんて、あたしには到底耐えられないですよぉ」

スナイパーへの好意から、ヒューマニズムに傾倒した訳ではなく、少女にとっての善悪の判断基準は、筋肉の質量によって左右されるのである。 だがそれは、筋肉が衰退すると同時に、警察機構への密告と言う諸刃の剣を兼ね備えているのだ。

「えっ!? そ、そんな簡単な理由でいいの?」

「はい。 何も難しく考えずに、ジミーさんとずっと一緒にいたい、ただそれだけでいいんです」

ロマンティシズムな思考に陥った少女は、リスクなど一切意に介さない献身的な自身の姿に陶酔していた。

そうか、物事をシンプルに考えればいいのか。 だったら、仕事を辞めて今の生活を続けていけばいいんだ。

年端も行かぬ少女の無計画な考えに感銘を受けたスナイパーは、自ら暗殺業を引退することを決意した。

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