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伝説のスナイパー  作者: まこと
104/162

No.104

あのクソ女を怒らせるのはまずいな・・・ 実際に警察に通報され兼ねない。

国会議員暗殺目的で入国したのだ、ここで警察の介入により身柄を拘束され、素性を調べられては美香の提言通り強制送還の憂き目に遭うのは、火を見るよりも明らかである。

いくら伝説のスナイパーと言えど、国家権力が相手では万に一つも勝ち目がない。

ここは下手に刺激せず、穏便に済ませねば。

「すいません。 荷物を運んでたら天井にぶつけちゃって。 これからは気を付けますので、今回は大目に見てくれませんか?」

煮えたぎる怒りを必死に押し殺し、殊勝な言い回しに専念する。

くそっ、何で俺があんな女にここまで気を遣わなくちゃならないんだよ! 今回の依頼を済ませたら、あのクソ女を真っ先に始末してやる。 おまえの命はあと一ヶ月もないんだ、そうやって必死にダンスでも何でも踊ってろ。

取らぬ狸の何とやら、早くも依頼完遂を前提とした計画を練り、美香への報復を妄想することで、辛うじて自我を保っているのだ。

『ほんとかしら? 間違ってぶつけたにしては、悪意が感じられるわね。 わざとやったんじゃないの?』

「わざとも何も、始めはあなたがうるさくしたんでしょう! それなのにジミーさんを責めるなんて信じられない! なんて失礼な人なのっ!」

普段は臆病と言う名の殻に閉じこもっているはずの絹江だったが、椎名の一件以来「逞しさ」を兼ね備え、誰の報復も恐れず意見を主張するにまで至ったのだ。

しかし相手は自身達のリーダーでもある暴君・美香、少女が牙を剥くには分が悪いと言えよう。

『あら、あんた密入国のくせに一丁前に女なんて連れ込んでるの? まぁ、お盛んですこと! 人がダンスの練習をしてる神聖な部屋の真下では、飢えた男と女がちちくり合ってるなんてね』

「あ、あたしとジミーさんは、そんな不潔なことなんてしてないわ! 変な妄想膨らませないでよ!」

羞恥に顔を赤らめ、反論する。

「それにあんなのがダンスって、笑わせないでよね! 振動で分かったけど、馬鹿の一つ覚えみたいに、ワンパターンな振り付けを繰り返してるだけじゃない。 変なダンス踊って、ジミーさんに迷惑かけないでよ!」

少女が自身の三半規管と引き換えに培ってきた単調なダンスの存在を否定したのである。

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