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伝説のスナイパー  作者: まこと
103/162

No.103

ドンッ、ドドッ、ドンッ、ドンッ!

ドンッ、ドドッ、ドンッ、ドンッ!

スナイパーと絹江が、201号室の住人である木嶋 美香を非難している間でさえも、当人はどこ吹く風と言わんばかりに、ジャンプターン決めの単調なダンスを一心不乱に踊っていた。

「しかし毎晩のことながら、ほんとにうるせー音だな」

スナイパーは、少女による足枷から解放された脚を揉みほぐし、妄想世界でヒロインとして崇めてきた美香へ対する悪態をつく。

「たしかに。 こんな音を毎晩立てられたら、頭が狂っちゃいそうですね・・・ でも変ね、どこかで聞いたことあるようなリズムだけど、何だったかなぁ・・・」

それもそのはず、自身が三半規管を犠牲にしてまで反芻してきたダンスである、勘付いて当然であろう。

「そうだ、あたしにいい考えがあります!」

そういうや否や、おもむろに立ち上がり玄関へ向かった。

なんだ、苦情でも言いに行くつもりか? だとしたらまずいな・・・ あの女すぐブチ切れるから、絹江に危害が及び兼ねない!

痺れ切った脚で玄関に向かおうとした矢先、絹江が傘を携え戻ってきた。

「ん? その傘で何するの?」

「ふふ、まぁ見ててください」

少女が不敵な笑みを浮かべ、ドンッ! ドンッ! ドンッ! 傘で天井を突き始めた。

「ち、ちょっと絹江ちゃん! 何してるんだよ!?」

スナイパーが慌てて制止させる。

「目には目をです。 相手も同じことをされたら、もう二度とやらなくなるでしょう」

さもありなんと言わんとばかりに、絹江が規定通りの常識を振りかざす。

「あの女には、そんな常識なんて通じないんだよ! 俺も一度注意しに行ったら、警察呼ばれそうになったんだよ」

「そんな大袈裟な・・・」

ドドドドドッ! 絹江の杞憂を余所に、階上からより一層激しい打音が鳴り響いた。

『うるさいんだよ、この密入国! 人の邪魔して何が楽しいって言うのよ!? 今度こんなことしたら、警察に通報して強制送還させてやるわよっ! ブタ箱に入って一生臭い飯でもかっ喰らってなさいよ!』

暴君・美香が憤怒に駆られ、理不尽な暴言をスナイパーに浴びせた。

「えっ!? な、何で? あたし、あたし何か悪いこと言ったの!?」

社会に出たことのない少女が、初めて理不尽を学んだ瞬間である。

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