No.10
どれほどの時間が経っただろうか?
微かに目を開けてみる・・・ スナイパーの眼前に女の顔があった!
「うわぁぁぁ!」
思わずベッドから転げ落ちた。
ドンッ!
「ひっ!」
壁の向こうから『うるせーぞ! 今何時だと思ってるんだ!?』
怒りを覚え壁を蹴った。
「なんだとコラぁ! こっちはそれどころじゃねんだよ!」
うるさいのが自分だということに気付いてないのである。
と、その時スナイパーは異変に気付いた。 壁の向こうは部屋はなく、非常階段なはず。
じゃあ、俺は今何に怒鳴ったんだ!?
・・・昔、聞いたことがある。 〝死者の声に決して返事をしてはいけない〟と。 返事をすればあの世に連れて行かれるからだ。 思い出すタイミングが悪かったようだ。
ガチャガチャガチャガチャガチャ!
ドンッドンッドンッドンッ!
「うおっ!」
ドアからだ! あの女が入ってこようとしてる!
『開けろっ! 早くここを開けろっ!』
監禁しておいて、今度は開けろとは、さすがに虫が良すぎるだろう。
だが、悲しいことにスナイパーには対抗し得る手段がなかったのだ。
出来ることと言えば、部屋の隅に膝を抱え、うずくまっていることだけなのだ。
銃という物理的攻撃が効かないのは解っているが、武器に縋らねば精神が崩壊しかねない。 いくら伝説のスナイパーと言えども、心霊現象の前にはなす術もなかったのである。
ドンッドンッドンッドンッ!
『お願いっ! 開けてよっ! 早くここから出してよー!』
くそっ、この叫び声いつまで続くんだ!?
ん? 〝早くここから出してよ〟?
もしかして・・・あの女は外じゃなく、この中にいるのか!?
ガチャガチャガチャ! ドドドドドドンッ!
『早く開けろー! ここから出せー!』
ドドドドンッ!
く、来るな来るな来るな来るな来るなっ!
きつく目を閉じながら必死に祈っている!!
『ぎゃあああぁぁぁ! やめてーっ』
何が起こってるか分からんが、早くここから出てってくれ!
しばらくして、うずくまっているスナイパーの耳元に『ね、あんた鍵持ってるんでしょ? 何で開けてくれないのよ?』
声のする方を見ると、顔がザクロのようにぐちゃぐちゃに割れた女がいた。
「ぐぎゃぁぁーっ」
スナイパーは意識を失った・・・