30点
1ヶ月の間、更新途切れてしまってすいません。何とかプライベートの用事も収まってきたので更新を再開させていただきます。
なるべく隔日で更新していきたいと思ってます。
バラバラバラ!
耳に届いたその音に頭を上げる。
日が落ち、闇が広がる空の彼方に明るい点を見つけた。
その点が グングン と大きくなる。
同時に耳に届く音も大きくなっていく。
そうして、音の正体が姿を表す。
「ヘリ……コプター?」
思わず言葉が漏れる。
宵闇を裂いて現れたのは一機の大きなヘリコプターだった。
点だと思ったのはそのヘリコプターが放つ強力なライトの光だった。
今そのライトは地上の私達を照らしている。
真昼のような眩さが満ちる。
そのヘリコプターが私達の直上でホバリングを行う。
強烈な風と轟音が周囲に吹き荒れた。
思わず耳を抑え、顔を伏せる。
「ちょっとヒトミ!」
あまりに突然の事に『これ何!?』と問いかけようとしたが、それよりも早く――
バッシャァァァ
と空から大量の液体が降ってきた。
それは雨のような粒ではなく、滝の如く圧倒的な質量を持っていた。
ヘリコプターから落とされた大質量の液体は、地面へと貼り付けられたままの大蛇の顔に直撃する。
大蛇の頭に当たると同時に弾け散るようにして周囲へと飛び散っていく液体。
同時に強烈な臭気が周囲に立ち込める。
それは鼻の奥を強く刺激し、頭をクラクラさせる。
あまり嗅ぎ覚えのない、それでいて知っているこの匂いは――
「――日本酒?」
昔、親戚の集まりなどで嗅いだ覚えのある、むせ返るような独特の匂い。
無色透明だから水と間違っ飲んで、盛大に吐いたのは忘れたい過去だ。
そういえば吐いている私を見てアイツはゲラゲラ笑ってお父さんに怒られていたっけ。
そんな事を唐突に思い出したが、どうして空から日本酒が降ってきたのかという疑問が消えるわけではない。
「この強烈な香り、もしかしてあの幻の名酒『白玄公』!?」
たが、目の前に立つ写楽さんはなぜ空から日本酒が降ってきたのかよりも、その酒についての興味が強いらしい。
その声には驚愕が滲んでいる。
「流石ですね、正解です」
携帯電話を片手に答えたのはヒトミだ。
「一度だけ飲んだことがあったから……でもこれだけの量をどうやってこの短時間で? ただでさえ手に入れるのが難しいっていうのに」
「いえ、以前からサクヤ様に献上しようと集めていただけですよ」
「なるほどね〜。でも勿体無い。これだけの量、数百万はしたでしょうに」
「数百万!?」
思わず叫び声を上げてしまう。
何それ、今空から惜しげもなく撒いたお酒ってそんなに高価だったの!?
「大丈夫ですよ、お小遣いの範囲内でしたので。それよりもヘリコプターのチャーター代と結界破りの能力者を用意するほうが高かったですから」
お小遣いの範囲内って……。
金持ちだとは思ってたけどちょっと想像以上過ぎる。
「それに大金を使っただけの価値はありました。ほら」
そう言いヒトミが指差す先。
「……グゥ」
そこでは、先程まで暴れ狂っていた大蛇が呻き声を漏らしていた。
写楽さんの拘束に抗うことも出来ないのか、地面にその大きな体を力なく横たえている。
「え? え? 一体何が起こったの?」
「あら、レイは天叢雲剣は知っているのにこれは知らないの?」
疑問の声を上げる私にヒトミが疑問で返してくる。
「なによこれって?」
「確かに興味がなければ知らなくても仕方ないかもね……レイはヤマタノオロチがどうやって倒されたか知ってる?」
再び疑問を投げてくるヒトミ。
いやいや、訊いてるんだから答えなさいよ。
意地が悪いんだか、説明が下手なのか。
どっちにしてもめんどくさい。
でもヤマタノオロチか……。
「普通に剣で斬られたんじゃないの?」
「30点」
「30点!?」
点数つけるの!?
「全然です、そんな答は幼稚園児でもしませんよ。今は神話は絵本にもなっていますしね」
うぐぅ!
幼稚園児以下って、以下って!
でも確かに知らないわけだし……。
「もぅ、ヒトミちゃん。あんまりイジメたらかわいそうよ」
「写楽さん……。ハァ、レイももう少し知識をつけとかなきゃいけないと思うんですけどね」
写楽さんがヒトミを窘めてくれたことで、ため息をつきつつもヒトミが説明をしてくれ始めた。
「と言っても見たままよ」
「見たまま?」
見たままって、ヘビがお酒をかけられて伸びてるだけ――。
「え? お酒ぶっかけたの!?」
「ハァ……見たまますぎるでしょ」
呆れたように額に手を当てるヒトミ。
いや、だって見たままっていったじゃん。
「お酒を飲ませて酔わして倒したのよ、ほんとレイちゃんは面白いわね」
クスクスと笑いながら写楽さんが教えてくれる。
あぁ、なるほどね〜。
なんかどっかで聞いた気がしないでもない。
「その通り。ヤマタノオロチはお酒に弱かったの。ちなみに同じ様に倒されたので酒呑童子って鬼がいるんだけど、とてもよく似てることからヤマタノオロチの子供だったんじゃないかって説も――」
「あぁハイハイ、わかったわかった。で、どうするんですか? 確かに大人しくなってるみたいですけど」
ヒトミの長くなりそうな薀蓄を遮って、写楽さんに問いかける。
「そうねぇ~。このまま倒しちゃうわけにも行かないしどうしよっか? 相手は一応神様だし」
額に手を掲げたままの姿で写楽さんが困ったように声を上げる。
そこに――
「では、私がその大蛇を引き受けよう」
そんな朗々とした声が響いた。




