お前タコ派?イカ派?
――なれない。
――どうあがいても絶望。
――だって接点無いやん。
――そもそも生皇帝陛下すら見たことないだろ。
――だ、だからどうしたんだよ!
――こ、皇帝陛下のぶ、ブロマイドあるし……。
――黙れ童貞。
――これだから童貞は。
どどど童貞ちゃうわ!
お前ら自分相手に容赦無さすぎだろ。会話内容がブーメラン過ぎるわ。
――だが、今回こそ生皇帝陛下見に行くんだろ?
皇帝陛下目当てに行く訳じゃ無いっつーの。祭りだから行くんだよ。
――つまり祭りが無ければ外に出ないと。
――ニート乙。
ニートちゃうわ!ちゃんと仕事探してるから!
――そう言いつつ早2年。
――進展のない就活。
――痺れを切らす両親。
――エイジ!いつまでそんなにだらけてるの!?
――毎日毎日パソコンに向かって!
――就活ちゃんとしてるの!?
やめて!来年まで待って!なんとか職に就くから!
――あ、これ無理ですわ。
――いい加減諦めろよ。
――もういいじゃん、軍に入れば。
――近衛になれれば生皇帝陛下拝めるんだぞ!
――あの女性の平均身長並みの小ささからおっきいおっぱいが見えるんだぞ!
――そっちの方が優良物件だろ常識的に考えて!
うるせーよ!
皇帝陛下確かに可愛いけどさ、皇帝陛下付きの近衛兵になれるかはまた別問題だろ!
――まぁまぁ、時に落ち着けって兄弟ー。
――世の中にはこんな格言だってあるんだぜ兄弟?
――……男は浪漫で生きてる。
――世の中にはこんな格言だってあるんだぜ兄弟?
――……男は浪漫で生きてる。
何しれっと良い感じに締めようとしてんだよ!
「おいエイジ!」
「!……なんだ、とーちゃんか。どうかした?」
不意に自分の世界から現実に引き戻される。
「なんだじゃねーよ。
お前、今年も祭り行くんだろ?金やるから、俺の分の陛下ブロマイド頼むわ。お釣りはお前が好きに使って良いぞ」
といって渡されたのはこの国『ユーリスヴィリア帝国』の現在の皇帝『アリアン・バルジオーラ・トゥエイス』が1人。要するに10000アパ札。
――おいおい、マジかよ。
――とても正気とは思えん。
――ククク……ッ!狂気の沙汰程面白い……ッ!
――お前が親父の立場になっても同じこと言えんの?
俺だったらまず無理。子供に大金は渡さねーよ普通。
「親父、良いのか?
こんなに金出したら絶対後悔するだろ」
「まー、年に一度の祭りだからな。
普段家族サービス何てしてねーからたまにゃこれくらい良いだろ?」
――これは嬉しい誤算。
――とにかく、必要性とか考えながら使おう。
――正直気がついたら要らない物買いまくってたとかマジで洒落にならんからな。
――じゃあそういった方針で。
――はーい、じゃー要らなそうな物適当にー。
――とーちゃん用皇帝陛下ブロマイド。
――同意。
――同意。
――同意。
「あ、俺の分のブロマイド買ってこなかったら全裸で町引きずり回してそのまま城の前で皇帝陛下に見られながら磔刑だからな」
――前言撤回。
――やっぱ真面目が1番だな
――蜂さんマークの引越し社です!
それ以上いけない。
☆★
――そういえば皇帝陛下っていつお見えになるんだっけ?
――確か、午後6時位だったと思う。
――あー、今年は皇帝陛下が自前の剣を持って振ってる演出とかねーかなー。
――それはブロマイドの見過ぎ。
――というかブロマイドにしか乗ってなかった記憶。
――けどキリッとしててかっこよかったよな?
――しかも肌からの露出見事過ぎるよな。――何度夜のおかz
言わせねぇよ!?
いつも言ってるけど、下ネタは出来る限り禁止だっつーの。
――なお本人はd
はいストップそこまで。下ネタは禁止だと何度言えばわかるんだ。
その先言われるとマジで死にたくなるからやめて。やめてください。
そうこうしている内に町の丁度中心に位置すると言われている噴水広場まで来ていたようだ。
どこもかしこも屋台が立ち並んでおり、国外からやって来て露店を開くような人も沢山いるらしい。
――露店って案外物価高いんだよな。
――買う気が更々ないのに買ってしまうジレンマ。
――でも、祭りとか来たらタコ焼きとか食べたくね?
――一理ある。
――お、タイミング良くタコ焼き屋発見。
――サーチ開始。
――サーチ完了。
――約100m先だな。
――どうする?買う?
――金には余裕あるし良いんでないの?
――買っちゃえ買っちゃえ。
うむ、じゃあ買うか。滅多に食えないからこそ美味いものがあると俺は思うんだ。
――ところでお前らタコ派イカ派どっちよ?
――イカ派。刺身にしたらめっちゃうまい。
――イカの方が数倍美味いわ。
――お前の部屋イカ臭いしな。
だから下ネタじゃねーか。
お前らは1日に何回ブーメランすれば気が済むん?
――あの、タコ派なんですけど……。
――黙ってろタコ。
俺もタコ嫌いじゃないんだけどね。
イカは好きだけどタコの方が汎用性に優れてるというかなんというか。
「だーかーら!さっさと金を払えっちゅーに!」
ん?
――何事だ?
――ここから見える?
――うーん、ちょい厳しい。
――誰かサーチよろ。
――お前やれよ。
――言い出しっぺの法則というのがあってだな……。
――バッカオメー、そんな物あってもやらせなきゃ意味ねーんだよ。
あーもう!誰かやれよ!仕事しろっての!
仕事しない多重思考をそっと閉じて声の元に向かう。
「どうかしたんですか?」
「おう、去年の坊主かい!久し振りじゃのう!
……実は、そこのめっちゃ豪華そうなクソガキが金払わねぇんだよ」
「余に向かってクソガキとはなんだ!余を誰と心得ている!」
――おい、この子……!
――あぁ、間違いねぇ……!
――皇帝陛下だ……!
「へ、陛下!ご、ご機嫌麗しゅう……!」
――まさか本物の皇帝陛下に膝をつける日が来るなんて……!
――なんで今日という日に限ってカメラを持っていないんだ!――急いで脳内に焼き付けろ!――要らん記憶は消し飛ばしちゃおうねー!
「うむ!苦しゅうない!面を上げい!
……わかったであろう店主!
余はアリアン・バルジオーラ・トゥエイス!このユーリスヴィリアの国の皇帝なるぞ!」
――KAKKEEEEEEE
――というかマジで惚れる。
――俺もああいう奴が許嫁にいたらなー。
てかそもそも俺に許嫁いないでしょうが。
「なーにが「余を誰と心得る!」だ!オメーみてーなガキが皇帝な訳がねーだろ!
コスプレアピールしたいのはわかったからからさっさと金払えや!」
「先程より言っておろう!代金は後で使いの者に払わせると!」
「それで払いに来なかったら食い逃げじゃねーか!」
――なんという必要性のない喧嘩。
――というかさ、どう考えてもこれ皇帝陛下が悪いよな。
――皇帝陛下は俗世に疎いらしいし、こっちの常識がわかってないだけじゃね?
――なら仕方ない。
――可愛いは正義。
――その話はともかく、このバカが講習の面前で膝をついた時点で注目集まりすぎてるぞ。
――みんな喧嘩に釘付けだしな。
――喧嘩も終わりそうにないし、どっか適当に連れ出した方が良いんじゃね?
それもそうだ。思い立ったが吉日とも言うし、早速実践するか。
「おっさん!たこ焼き2つ!」
「お、おう。2つで1000アパな」
財布から10000アパ札を急いで取り出して渡す。
「9000アパのお釣りだ。
……ほれ、出来立てのたこ焼き2つ持ってけ」
「陛下、行きますよ!」
「え、あ、ちょっと待て!余はまだタコヤキというものを食べておらんぞ!」
「良いから!」
皇帝陛下の着ている服の襟を乱雑にひっつかむとそのまま引っ張っていく。
――これからどこ行く?
――取り敢えず人気ない場所が良いな。
――広域エリアサーチ起動。
――サーチ開始。
――サーチ中……。
――サーチ中……。
――サーチ中……。
――サーチ完了。
――1番近い所はベリッドの丘だな。
――懐かしいなあそこ。
――大概サボるときはいつもあそこだったよな。
――うむ、あそこはあまり人も来ないから問題なかろう。
――ナビゲーション開始。
なんでこういう時だけお前らって頼りになるん?