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工業男子は七人の女神様に崇拝する  作者: 鹿島夏紀
序章 工業男子の成り果てと女子寮
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第4話

「お、白菜(はくさい)か」

「違うよ! 白菜(しろな)篠崎(しのざき)白菜(しろな)だよっ。...で、緑一くんはなにをしてるの?」

「違う、これは違う! 」

「ゆかりんに馬乗りされて、しかもー」

いつも夏に咲く向日葵のような笑顔を浮かべる白菜が、今は軽蔑するかのような視線をこちらに向けている。

「緑一くん、そんな人だったんだね...」

「違う! 断じて違うぞ! 無理やり触らされただけで、俺から触ろうなんて考えていない!」

「でも、鷲掴みしているように見えるよ...」

シマッタァ‼ ついこの世のものとは思えない柔らかさのあまりに手が勝手にっ!

悪気はないが、事実、鷲掴みしているように自分でも見える。

「まったく、間が悪いな」

「え?」

すると、ゆかりんは立ち上がり、ドアの方へと歩いていく。

生徒指導室の外側に立っていた、白菜の前に立つと、何事もなかったようにドアを閉め、

「さて。続きをしよう」

おまけに後ろ手で鍵をしっかりかけた。

「何が続きをしようだよ! 続きもなにもないし、続けたくなんかねぇ!」

「美人教師と密室で2人きりだぞ。なかなか興奮するシチュエーションだろ?」

「俺は興奮しませんね」

「じゃあ、脱ぐか」

「やめろォォォォ!?」

ゆかりんは、ネクタイに手をかけたまま、

「冗談だ」

クソッタレ...

「さっきも言ったが、私がモヤシのような1人の男子生徒に振り向くわけがない」

「モヤシは余計です。...そういえば、親に結婚しろだとか言われないんですか?」

「...余計なお世話だ。私は1人の方が気楽でいいからな、結婚なんてしない」

「さいですか...」

時計をみれば、かなりの時間が経っていた。

なるほど。白菜が様子を見にきてもおかしくない。

俺は机の上においたままにしていた辞書のような紙束を持ち上げ、「どこに行くんだ?」というゆかりんの問いかけに、「帰ります」と一言答え、再び声をかけられる頃には、生徒指導室を出ていた。

生徒指導室のドアを閉め、さて、帰ろうかと横を向くと、すぐ横で壁に寄りかかる白菜の姿があった。

「緑一くん、お疲れさま」

白菜の視線は、哀れみと蔑みに近いもので、「お疲れさま」というのも、(ねぎら)いの意を込めたものではない。

「ああ。あの人と話すのは、すごく疲れる」

「そうかな? まあ、緑一くんの前だけでは、なぜかマゾヒスト体質に変わるけど...」

そう。篠沢紫先生は、工業男子(女子を含む)との会話のとき、サディストなのだが、俺と会話する時だけ、マゾヒストになる。

少しでも否定的感情を向けると、息を荒らげ、頬を赤くし、なんとも言えない扇情的な雰囲気を漂わせる。

辞書のような資料を抱えなおすと、「半分持つよ?」という本物の女神のような微笑みを浮かべながら聞いてくる優しさに、ここで女神様に持たせることで、どうなるかを考えると、「いや、こういう頭を使わないことは、工業男子の仕事だ」と答えると、白菜は、「そうだね」と俺の言葉の意味を察したのか、作り笑い。いや、苦笑いを浮かべていた。

「...確認するが、俺は何もしてないからな」

「わかってるよ。緑一くんは、あんなことできる人じゃないもん」

「白菜...」

「って、嘉野先輩が考えればいいって言ってた」

「...」

「というよりは、チキンだから無理だろうなとも言ってた」

「あの野郎...」

この重い紙束を投げつけてやりたい。

女子寮。管理人の部屋に戻り、文句の1つでも言ってやろうと、歩く速度を速めた。

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