表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
工業男子は七人の女神様に崇拝する  作者: 鹿島夏紀
最終章 女神様の女神様による管理人とのデート
32/37

第30話

「緑一サンは女の子に縛られるのが趣味なんデスか?」

「とりあえずメリアは黙ろうか。事態がややこしくなる」

 工業高校ではよく行われる亀甲縛りを初めてみたのか、メリアは物珍しそうにジロジロとみている。

「で、緑一君はなぜメリアと一緒だったんだい?」

 女神様たちは俺を囲むようにして見下ろしていた。少し離れた場所で夏帆と母さんがニヤニヤしているのが腹立たしい。

 娘虎先輩に関しては、もう、涎がとめどなく垂れていて、床に水溜りができている。体内の水分量と娘虎先輩の身体がどうなっているのかわかったものではない。

 俺とメリアの出会いについては、詳しいことはカリエさんに聞いてほしいと言いたいところだが、この状況からしてメリアは面白がっているから連絡を取ってくれなさそうだ。

 打開策を考えるも長いこと黙っているわけにもいかず、俺はしぶしぶ口を開く。

「駄菓子屋で会ったんですよ。それで車に乗って送ってもらったんです」

「ウーン、それは違いマスよー。カリエが拾ってきやがったんデス」

 メリア、拾ってきたという言葉は違うと思うぞ。

「嘉野、嘉野。緑一くん食べていい?」

「もう少し待て。まだ聞かないといけないことがある」

「俺は娘虎先輩に何をされるんですかね」

「え、ナニされるんだよ?」

 にっこり微笑む娘虎先輩。非常に殴りたい。

「で、カリエとは誰なんだい?」

「メリアに聞いてください」

 視線をメリアに向けると、メリアは俺から受け取った視線を嘉野先輩へと流した。

「執事デスよ。嘉野は会ったことありますデスよ」

 メリアがそういうと、嘉野先輩は「あー、あの人か……」となにか嫌なことでも思い出したのか、額に手を当てている。

「事情は分かった。カリエさんが関係しているということは無茶な要求からだろうね」

「無茶かどうかはわかりませんが、とりあえず俺を開放してください」

このみ、緑一君を解放してやってくれ」

 レンゲの「むむぅ、致し方なし」と面倒くさそうに返事をすると、俺の身体に巻き付けられた縄を解いてくれた。

 縛られていた箇所が少し赤くなっている。通りで少しでも動いたら骨が軋むような痛みがあったわけだ。

 俺が亀甲縛りから解放されたところで、家のチャイムが部屋に鳴り響く。夏帆が玄関に向かうと、

「お母さん、ジェントルマン風の白鬚おじさんがきた」

 まさしく、カリエさんである。

「お、カリエですネー」

 メリアはリビングの入り口から玄関に向かって顔を出すとカリエさんだと確認する。俺はカリエさんに上がっても大丈夫ですと言ってリビングに通した。

「初めまして。シュルグメイ家執事のカリエと申します」

 背広にパリッと糊の張ったワイシャツに、首元まできっちりと絞められたネクタイ姿のカリエさんの丁寧な挨拶に母さんと夏帆はこの場に合わない窮屈さを感じたらしく、慌てて、背筋を伸ばして挨拶をする。

 その姿があまりにも滑稽に見えて、この場にいる全員が苦笑いを浮かべていた。

「そこまでかしこまらなくても大丈夫ですよ。……お嬢様、嘉野様たちへの挨拶は終わりましたか?」

「ハーイ、挨拶しましたヨー!」

「それでは私たちはここでお暇させていただきましょう。ホテルのチェックインまで時間がありません」

「エェー、もう少し話していくのデスよー」

 何やら口論になりそうだったのを悟った母さんは、カリエさんに泊まっていっても大丈夫と提案する。

「しかし……」

「大丈夫ですよ。カリエさんは主人の書斎を使ってもらえば場所はあります」

「緑一サンのマザーもこう言ってるのデス。「ここはお言葉に甘えることにしましょう」です!」

 カリエさんは少し考えた末、「お手伝いできることがあれば、なんなりと申しつけください」と承諾した。

「それじゃあ、今晩の夕食はカリエさんにお願いしても大丈夫かしら」

「夕食、ですね。簡単なものしか作ることができませんがそれでよろしければ引き受けましょう」

「カリエの料理は美味しいデスよー! 料亭?を出せるほどデス!」

 メリアの直球な褒め言葉にカリエさんは照れながらも「それほどでもありません」と謙遜の表情を見せた。謙遜のできる男という言葉が似合いそうである。カリエさんは晩飯の買い出しに行き、女神様たちと俺はそれまでの時間、暇をつぶすために町を歩くことにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ