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工業男子は七人の女神様に崇拝する  作者: 鹿島夏紀
最終章 女神様の女神様による管理人とのデート
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第29話

「オー。ここが緑一サンのマイハウスですかー」

カリエさんの運転する車に乗って時雨屋を出てから数分後。俺とメリアは家の前にいた。

「お前の家に比べたら小さい家だろ?」

嫌味交じりの言葉にメリアは「そうですケド」と返し、

「でも可愛いおうちなのですヨ」

とまたもや眩しい笑顔を浮かべる。

(やっぱりスタイルいいなあ……)

身長はそこまで高くないが、日本人の女性平均身長より高め。少し癖のついた腰まである長い金髪は外国人だなと実感させる。綺麗なコバルトブルー色の瞳はどこか幼さを残しているが、それでいても凛とした眼光を発していた。まさに美人という言葉が似合う存在である。

「どうかしましたカ?」

俺がメリアのことを見ていたことを不思議に思ったのか、メリアは心配そうに見つめ返してくる。俺は「いや、何でもない」と言うと玄関のドアに手をかけた。

カリエさんは近くのコインパーキングに車を停めてくるそうで、「あとからご自宅にお伺いします」と言い残し車を発進させた。

「緑一サン、腕を組みまショウ!」

「はあ!? 馬鹿、そんなことできるかよ」

「英国紳士は女性をエスコートするもんなんですよ」

「俺は英国紳士じゃないんだ」

「まあまあ、そう硬いこと言うなっつてるんですヨ!」

「げ、玄関に入るまでだからな」

「ハイ! それでいいですヨ!」

返事と同時に腕を絡めてくる様子からして、行動が慣れているような気がした。イギリスではこういうのが普通なのか……? そう思いつつ俺は玄関のドアを開けた。

「兄さっぁぁぁぁっぁぁぁぁん!!」

玄関のドアを開けると同時に俺の目に映ったのは、数メートルの廊下を使って助走をつけた夏帆かほが走ってくる様子だった。

しかし、その助走をつけた夏帆は俺に飛び込んでくることはなく、数メートル手前で停止した。

「に、兄さん……?」

「おう、ただいま。お前、俺の呼び名が―――」

「お母さん! 兄さんが金髪巨乳美少女を毒牙にかけてます!!」

「かけてねえよ!!」

なんでそんな風になるんだよ!! 別にやましいことはしてないだろ!?

夏帆は助走をリビングに向けて走り出し、ドアを蹴破る勢いでリビングに突っ込んでいった。

「緑一サンはメリアをめちゃくちゃにするつもりでマイハウスに監禁を……」

「おかしい!! ちょっとまって!? 色々ツッコミをいれるところはあるけど、監禁じゃない! そこから違う!!」

「ほら、お母さん! 兄さんが金髪巨乳美少女の胸に腕を挟まれて鼻を伸ばしてます!!」 

「あら……」

「あら、じゃあない!! 違う、この娘は―――」

「お母さんだけじゃ物足りなかったの……?」

「お前何言ってんの!? 物足りなかったって何!? そもそも母さんに手をだした覚えはねえ!!」

「うん、緑一君。おかえり」

夏帆と母さんの立つ廊下の隙間から嘉野先輩がひょっこり顔を出す。

「ええ。ただいまと言いたいところですが!!」

「どうかしたのかい?」

「てか、なんでメイド服なんですか!? あ、さっきメリアに見せてもらった写メか!!」

メリアの車で見せてもらったあの写メのままなのか! 着替えろよ!

「オー、嘉野じゃないデスカ! お久しぶりでやがりますネー!」

隙間から顔を出した嘉野先輩に元気よく手を振るメリアは心底嬉しそうだ。

「め、メリア? なんで君がここに……」

手を振るために頭上へ上げた手でそのまま人差し指を突き出し、嘉野先輩へ指の先端を向けた。そして、ウインクをしながら、

「緑一サンとデートしてマシタ!」

笑顔でそう言った。

無論、冗談なのであろうが嘉野先輩の表情は柔らかかった。……瞳以外は。

「緑一君、今からゆっくり話そうか」

あえてメリアの名前を呼ばないところが恐ろしい。俺は拒否権などなくただ頷くだけであった。

荷物を手に提げたままリビングへ向かう。リビングまで数メートルの廊下だが、これから降りかかる災難を想像するだけで足が重くなるのと同時に廊下がやけに長く感じられた。

「荷物は緑一君のお母さんに預けて、緑一君はそこに正座してくれるかな」

「了解です」

材料の入ったレジ袋を母さんへ渡し、指定された場所に正座をする。

俺が正座したのを確認すると嘉野先輩はレンゲに合図をした。その合図にレンゲは「……まあ、いいじゃろう」気乗りしない返事を返しその場から消えた。……消えた?

「すまんの、緑坊。しばらく我慢してくれ」

「なっ……!?」

レンゲは消えたのではなく目にも留まらぬ速さで俺の背後に回ったのだ。そして俺の反応より早く、

「なんで縛るんだよ!」

亀甲縛りをきめたのだった。……俺に。

もうなんというかレンゲの移動速度と手際の良さ(縛る意味で)は、呆れと怒りを通り越して感嘆へと変わるほど。

「ま、こんなもんじゃろ」

「こんなもんじゃろ。じゃねえよ」

まあ、実に綺麗な亀甲縛りをされていました。もう模範としかいいようがないほどの美しさですね。

「まあ、緑君は女の子に縛られるのが好きなのね……!」

「さっきから何を言ってるんだ!?」

「うふふふ」

「怖い! 実の母なのになぜか恐怖心が芽生えそう!」

「さて、緑一君。久しぶりの不純異性交遊審問会だ」

「いやですよ。そんな審問会」

「じゃあ不純同性交友審問会だ」

「もっと嫌ですよ!!」

「名前はどうでもいいんだ。今から私が話すことについて本当のことを話してくれればいい。もし、嘘をついていることがわかったら、」

「わかったら……?」

「緑一君を娘虎の刑に処する」

娘虎先輩の様子を横目でうかがうと、涎を垂らし、両手を体の前で怪しく動かす娘虎先輩が目に入った。








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