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工業男子は七人の女神様に崇拝する  作者: 鹿島夏紀
最終章 女神様の女神様による管理人とのデート
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第28話

「そういえば、私の名前をお伝えしていませんでした。私、シュルグメイ家に仕えるカリエと申します」

「カリエさん……。ずいぶん珍しい名前ですね。てか日本語が……」

外国人にしては日本語が流暢すぎる。

「日本語は独学ですよ。昔から日本の文化が好きでして」

「そうだったんですか」

そうだよな。そうでもなければここまで日本語を話せることなんてできないだろうし。

「では、緑一様。車にお乗りください」

「あ、やっぱりこの車なんですね……」

駐車場に見えていたからまさかとは思ったけど。やっぱりこの車なのか……。

黒いセダン型の車の後部座席は全く外からは見ることができない。いやマジで危ない人が乗る車みたいだぞ……。

「後部座席はお嬢様が乗っていらっしゃるので、助手席に乗っていただけますか」

「はい、わかりました」

カリエさんが車に乗り込んだのを確認すると、俺も車内へと体を滑り込ませた。

「お嬢様。お嬢様に豆大福をお譲りくださった緑一様でございます」

カリエさんは首だけを捻り後部座席へと話しかけた。

「そうなのデスカ。ありがとうございますネー」

その返事にお世辞にも流暢に話しているとは思えない発音の日本語が返ってくる。

「しかし、その緑一サンがこの車に乗ってやがるんデスカ? 」

乗ってやがる……!?

俺が驚いていると、「緑一様。こういうことでございます」とカリエさんが諭すように言う。

「高校も同じになるようですし、顔合わせをついでにご自宅までお送りしようと思いまして」

「オー、高校が同じになりやがるんですか! では自己紹介をしないといけないっつうことですネ! 」

「俺は天釣緑一。電子工学科だ」

「お、嘉野と同じディパートメントですネー! 」

「でぃ、でぃぱー……? 」

「あー、日本語だと、ウーン、えっと、専攻デス! 」

ああ。科っていうことか。英語は全くわかんねえよ……。

「メリアの名前はメリアですヨ! メリアってよんでくだしあ! よろしくお願いしますヨー! 」

「あ、ああ。よろしくな」

「フムフム。なるほどです」

「どうした……? 」

座席から乗り出し、急に顔を近づけてきたと思ったら品定めをするかのようにジロジロと見てくる。

「いえいえ、前に留学に来たときはこんなカッコイイ男の子は紹介してくれやがりませんでした。嘉野も乙女なのですネー! 」

「乙女? あと俺はかっこよくないぞ」

「あらら……。ナルホド、メールで嘉野が言っていたことがよくわかりやしたヨ」

嘉野先輩、留学生とメールができるほど英語が話せるのか。恐るべし嘉野先輩。

「嘉野先輩から何か聞いたのか? 」

「緑一サンが女子寮の管理人っつうことぐらいですヨ」

「まあ、そのぐらいだよな知ってるとしても、」

「あとですネー、緑一サンが女の子をはべらせているっつうお話も聞いちまったですよ」

「まてまて、俺は女子を侍らせたりしていない」

嘉野先輩。やっぱり変なことを吹き込んでいたのか……。

「しかしですね、女神様を侍らせているっつう話は本当のようですネー」

メリアが突き付けてきた携帯の画面には、女神様たち(母さんと夏帆を含む)がメイド服を着た写真が写されていた。場所はもちろん俺の家。……そのメイド服はどこから持ってきたんだ。

「ウーン、楽しそうですネ。メリアも一緒に遊びたいです」

「俺の家で暴れてるんだぞ。面倒なだけだ」

「おお、なんと! ココは緑一サンのハウスでしたか! カリエ、今から緑一サンのハウスに行くっつう話でしたよネ?」

助手席と運転席の間から顔を出して問うメリアに、「はい、お嬢様」と左程、俺たちの会話を気にしている様子もなくカリエさんは運転を続けていた。

「グッドタイミングです! 緑一サン、緑一サンのハウスにお邪魔しても大丈夫ですカ?」

「別にかまわないけど……」

カリエさんはどうなんだろう。

俺の視線に気づいたのか、カリエさんは俺の顔を横目で一瞬見ると「この後の予定は特にございませんので大丈夫ですよ」と答えた。

「イェイ! 久しぶりに嘉野たちに会えるのですネ! 」

ピースを突き付けニカっと笑う表情が眩しい。言葉遣いはちょっとアレだが、悪い子じゃあなさそうだ。




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