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工業男子は七人の女神様に崇拝する  作者: 鹿島夏紀
序章 工業男子の成り果てと女子寮
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第2話

「嘉野先輩、ここって地下倉庫なんですか?」

「いや、旧校舎の地下室だよ。 工具や実習材を保管するためのね」

ここは旧校舎なのか。

「...緑一君、君は確か男子寮に住んでいるのだったかな?」

「はい、男子寮ですよ」

「部活にも所属していなかったな?」

「帰宅部です」

急にどうしたんだ?

「華がない生活には飽きただろう?」

「ええ、まあ。草ばかりで華なんて1つも咲いていません」

「... 完璧だな」

「何がです?」

「それは、私についてきてみればわかることだよ」

前を歩く嘉野先輩の顔は見えないが、おそらく、何か企んでいるような表情に違いない。

「ほら、ここだ」

通路がそこまで広くないため、嘉野先輩は壁に張り付くようにして道を開けた。

携帯のライトで前を照らしてみると、木製のドアがあった。

「...どこに繋がっているんですか?」

「ドアを開けてみればわかるよ」

先輩に言われるがまま、木製のドアをゆっくりと開く。そこにあったものは、

「...はい?」

「り、緑一!? あんたなんでここにいるのよ!」

ドアを開けてから、約2秒後。ドアのすぐに近くにいた女子に、いきなり胸ぐらを掴まれた。

その胸ぐらを掴んだ女子の顔には、見覚えがある。

「も、桃香...?」

「なに? ここにきて弁解なんてするんじゃないでしょうね」

弁解...?

「とぼけた顔するんじゃないわよ! ここがどこかわかってるの⁈」

「いや、まったく」

「あんたねぇ...!」

なぜ、俺はこんなにも怒鳴られているんだ?

「桃香君。緑一君は、私が連れてきたんだ」

「雨宮先輩...?」

俺に(主に怒鳴ることに)夢中で、俺の背後に嘉野先輩がいることは気づかなかったようだ。

「雨宮先輩。ここは男子禁制って決めませんでしたか?」

「何を言うんだい、緑一君は立派な女子寮の管理人なんだ」

「「管理人?」」

俺と桃香。俺たち二人は、嘉野先輩の思いもよらない発言に、思わず聞き返してしまう。

そして、顔を見合わせ、

「緑一が!? ダメですよ、こんな下心しかなさそうな男子生徒に管理人を任せたら!」

「下心しかなさそうは、余計だけどな! ...俺もついてこいと言われただけで、管理人をするなんて言ってません」

「緑一君。まさか君は、あの工業男子達が本気で追いかけているとでも思ったのかい?」

「え?」

「あれは、全部彼らの演技だよ。ここに連れてくるためのね」

「じゃあ、付き合ってくれと言ったのは...」

「ああ、私の演技に。という意味も含めてね」

あの野郎共の般若顔は、全部演技だったのか... 演劇部にでも入部しろよチクショウ...

「迫真の演技だっただろう」

屈託ない笑顔で笑う嘉野先輩を見て、喉まで出かかっていた罵倒の言葉は、呆れと怒りを交えた溜め息に変わった。

「素晴らしい演技でしたけど、説明はしっかりしてもらいますよ」

「ああ、そのつもりだよ」

嘉野先輩は、ついてきてくれ。と一言いい、女子寮? の奥へと歩いていく。

いくつもドアがある廊下をぬけ、階段を上り、また廊下をぬけ、1つのドアの前に立った。

「さて、どれだったかな」

嘉野先輩は、おもむろにポケットからジャラジャラといくつも鍵のついた、鍵束を取り出した。

「これだな...」

カシャンと、軽い音をたてて鍵がまわる。

「さあ、入ってくれ」

「失礼します...」

部屋の広さは、約8帖ほど。男子寮より少し高そうなベッドに、タンスクローゼットと本棚、机、テーブル、テレビ。

「ここは?」

「女子寮管理人用の部屋さ。緑一君。君は今日からここで生活、管理人をしてもらう」

「いや、まだ了承してませんよ」

「拒否権はないよ。ほら」

嘉野先輩が、指をさしたその先には、ガムテープで舗装したダンボールが3つほど、テーブルの上に積んであった。

「なんですか、これ」

「緑一君の私物さ。予備の制服から私服、教科書類まで全部」

「はあ!?」

なんでここに俺の私物がっ!?

「君と同室の藤本君に、部屋の鍵を葵君の写真と引き換えに渡すように頼んだら、快く引き渡してくれたよ」

「雅哉の野郎...」

「藤本君、相変わらず葵に一途ね...」

嘉野先輩は話を仕切り直すように問う。

「で、どうするんだい? 管理人をするのかい、しないのかい?」

「ここまできたら、」

軽く息を吸い、

「するしかないでしょう」



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