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工業男子は七人の女神様に崇拝する  作者: 鹿島夏紀
最二章 管理人と乙女が燃えるクラスマッチ
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第23話

「うむ。美味じゃった」

「お粗末様です」

 新たに人数も増えて晩飯だったのだが、

「お前、食いすぎだろ。この体のどこに入っていくんだ……?」

「緑坊、細かいことは気にするでないぞ」

 作ったカレーの半分に近い量をレンゲが一人で食べてしまった。

「うむ。お茶も美味い。食後は熱いお茶じゃな」

 晩飯を食った後、お茶で一息ついている俺に桃香が声をかけてきた。

緑一りゅういち、お風呂に入ってないんじゃない?」

「まあそうだな。でも理胡が入るなら俺は部屋のシャワーでいいぞ」

 理胡に視線を向けると、さっきの言葉を気にしているのかすぐに顔をそらさらされた。……なんか悲しいぞ。

「なんだ緑坊りゅうぼう、風呂に入っておらぬのか」

「見ればわかるだろ。体操服だ」

「ふむ、奇遇だなわしも入っておらぬ。そこで提案なんじゃが―――」

 何か嫌な予感が……。

「丁重にお断りさせてもらう」

「まだ何も言っておらぬのじゃが……」

「じゃあ何だ」

「久しぶりにわしと風呂に入らぬか?」

「嫌です。丁重にお断りさせてもらいます。てか久しぶりってなんだよ」

「なあに、硬いこと言うでないぞ。 なんなら理胡も一緒に入ろうぞ」

 ブシュウゥゥゥゥゥ!!

「「理胡ぅぅぅぅ!!」」

「な、なんじゃ? 理胡、緑坊と風呂に入りたくないのか」

「入りたくないに決まってるだろ!?」

 顔を赤く染め、頭から蒸気機関車のように煙を上げながら、

「入りたい」

「「なんで!?」」

 り、理胡が「いやじゃない」ではなく「入りたい」と意思表示を……!?

「理胡、無理をしなくていいの。私だって、ほら、ね?」

「そうだぞ、理胡。私だって、女子寮の秩序をだ、な……」

「なんでお前ら顔が赤いんだよ!!」

 俺の目の前に広がる女神様の顔が赤くなるという不思議な光景に、さらに爆弾に近い発言を浴びせる人間がいた。

「なんじゃ、お主ら揃って緑坊と風呂に入りたいのか。なんとも破廉恥な女神様よのう」

「「お前が言うな!!」」

 レンゲは対する女神様総員のツッコミ。すげえ迫力。

「今晩、わしは緑坊の部屋に忍び込むつもりじゃったのだが……。 敵が多そうじゃ」

「本人の前で言うなよ」

 女子寮管理人になってわかったことなのだが、女神様たちに女子寮ここのセキュリティは通用しない。鍵をもろともせず部屋に入ってくる。それにレンゲともなれば……。

「わしは女子寮ここの防犯なんぞ赤子の手をひねるが如く突破してしまうからのう。ちと心配なときがある」

「お前が例外なだけだ」

「それでは風呂に行くかとするかの。ほれ、緑坊準備をせい」

「人の話を聞けよ!! それから俺は一緒に入らねえ!!」

まったく、つまらん男じゃ。……仕方あるまい、お主の部屋のシャワーを借りることにしよう」

「だからなんで俺の―――」

「現国でわからぬところがあるのじゃ。あとは察せ」

 ああ。なるほど。現国|(現代国語)がわからないなら最初からそう言えばいいのに。

「まったく……。筆記用具とノート持ってこいよ」

「もうお主の部屋に置いてある」

「鍵がかかっているはずなんですが」

「さっきも言ったじゃろう。わしにここの防犯は通用せぬと」

 お前、本当に何者だよ。

「ああ、あと」

 レンゲは食堂のドアを開け、振り向きぎわに、

「球技大会はわしの学科が優勝らしいのう」

「は?」

「緑坊。お主とのデート楽しみにしておるぞ」

「は、はぁぁぁぁぁ!? ちょっとまっ」

「「悔しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」」

「え?」

「なんで、私の学科が優勝しないかった!? 守備も攻撃も完ぺきだったはず!!」

「嘉野先輩に負けたから仕方がないと思ってたけど、」

「「本人が出てないのにズルい!!」」

 あの、女神様……?

「緑一君、君は誰とデートしたいんだ!!」

「そうよ緑一、誰とデートしたいの!?」

「いや、え?」

 俺はそのデートの話を知らないんですが!?

「まあ、レンゲの学科が優勝したみたいだし……」

「「悔しいぃぃぃぃいぃ!!」」

 女神様たちの叫びが女子寮に響き渡り、ゆかりんに怒られたのは言うまでもない。

 それから数十分後。俺はレンゲに現国を教えていた。

「むむむ……。これは本当にジャパニーズな言葉なのかの」

「なんで日本語って言わないんだよ。ほら、ここ間違ってるぞ」

「むぅ、勉学は嫌いじゃあ」

「泣きごと言ってないでさっさと片付けるぞ」

 現国の勉強、といっても教えているのは要提出の課題で基礎中の基礎なのだ。

「時にお主。デートはどうするのじゃ」

「シリマセンネソンナコト」

「むっ、しらばっくれる気じゃな?」

「さ、サア?」

 知りませんよ、デートなんて。

 まあ、そんなことは通用するとは思ってなかったけど。

「そんなことだから緑坊は鈍感だと言われるのじゃ」

「いや、鈍感の意味がわからないんだよ」

「お主、わしより語彙力がないのではないかの……?」

「いや意味はわかるに決まってんだろ!?」

「はあ、もういいのじゃ……。デートまでとは言わぬがちょいと買い物に付き合ってくれぬか」

「買い物? そんなでいいのか?」

「まあの。わしは成績が良くなくお主たちとあまり遊べないからの。理胡みたくお主と料理をして思い出づくりでもしたいのじゃ」

「それなら、テーマパークとかでもいいだろ」

「わしの身長で人ごみは泥水に飛び込むのと同じじゃ」

 まあ、人ごみは嫌いって言ってたしな……。

「それなら俺の家に行くか? ちょうど補習振替日で三連休になるし」

「ほ、本当か!? お主の実家に行っていいのかの!?」

「よく嘉野先輩と桃香も泊りに来てたしな。部屋はそんなに広くないけど、それでいいなら」

「全然いいのじゃ! モチのロンロンでウェルカムじゃ!!」

 なんすかモチのロンロンでウェルカムって。

「じゃあ親に連絡しないとな」

「うむ! 楽しみじゃ!」

「ああ、んじゃあ課題の続きをするか」

「え、あ、いや、それは……」

「来週提出なんだろ? それに明日には出発するし」

「むむぅ……。仕方なしかの」

「頑張れ」

しぶしぶといった様子でレンゲは課題を進め始めた。俺は親に連絡しないとな……。正直なところ、妹と母さんの反応が恐ろしいけどな。

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