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工業男子は七人の女神様に崇拝する  作者: 鹿島夏紀
最二章 管理人と乙女が燃えるクラスマッチ
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第20話

チャキッ……。

料理とは。食品や食材、調味料などを組み合わせて加工を行い、およびそれを行ったものの総称である。

つまり、調理過程のことを示す。のだが。

「理胡、お前は今から何をする気だ?」

「……料理」

「うん、だったら()()は必要ないよな」

理胡が持っているのは包丁ではなく、刀身が40センチは優に越えていそうな長いナイフで、世間一般的にはマシェットと呼ばれる類のものだろう。

「……なんで?」

「なんでって……」

農業や林業で使うようなナイフを女子校生が、ましてやなんで料理に使うんだよ。

「とりあえず、こっちな」

理胡に手渡したのは、料理の最中に怪我をしにくいように作られた子供用の包丁だ。

これなら理胡が過って怪我をしないですむ。……我ながらいい心がけだ。

理胡は俺が渡した子供用の包丁を見つめ、

「……これは緑一が買ったの?」

「そうだ、さっき買ってきた」

近くのホームスーパーで買ってきたお手頃価格の1200円。

理胡はもう一度包丁を見つめ、

「いやいや、なんで綺麗にタオルに包んでんの!?」

タオルで丁寧に包み始めた。

「……保存する」

「使わないとそれだと包丁としての意味を成し遂げてないから!」

「理胡はこっちがいい」

「えぇえぇ……」

理胡は長いナイフを掲げるように持ち、意義を認めないとばかりに俺のほうを睨んでいる。

「わかった、もうそれでいいから怪我だけはすんなよ?」

「うん」

コクコクと頷き満足そうだ。

「で、何を作るんだ?」

「カレー」

「カレー、か」

まあ、カレーなら失敗することはないだろう。

「じゃあ、材料……」

「うん」

理胡は、俺が指示する前に材料である人参をまな板の上に置いて包丁を構えていた。……上段の構えで。

「まてまて。人参を切るだけなのにその構えは何だよ」

「油断大敵」

「油断大敵もなにもねえよ!! 収穫されている時点でこいつの運命はカレーになるって決まったんだよ!!」

「もしかしたら襲いかかってくるかもしれない」

「お前の人参の定義はなんなの!?」

「……野菜界セリ科ニンジン属ニンジン種」

「無駄に詳しい!!」

理胡って家庭菜園みたいな趣味あったっけか……?

しかし、まあ。包丁ナイフの使い方から教えないといけないのか。

「いいか、理胡。包丁はこうやって持つんだ」

理胡の後ろから手を重ねるようにして包丁を持ち、もう片方の手で材料を抑える。

「こうやって『猫の手』のようにして持つことがコツなんだ。これで指を切ることが少なくなるから覚えておけよ?」

理胡は、慎重が低いためおかげで後ろから手をとって教えても、すっぽり腕の中に入って邪魔にならない。

「じゃあ、ゆっくりするから感覚を覚えろよ?」

「……うん」

指を切らないように材料を慎重に切っていく。


 ○


「ん? 食堂に誰かいるのか……?」

もう、夕食の時間を過ぎているのだが……。あ、緑一君か? 疲れて部屋で寝ていたから食堂にきていなかったのか。

「桃香君。緑一君の分の夕食は別にとっておいてあるのかい?」

「え? 緑一食べにきてなかったですか?」

「そうかい、聞いた私がバカだったよ……」

桃香君ももっと緑一君のことを大切にしてもいいと思うんだがなあ。あれだ、きっと桃香君も緑一君の……。

「……から、……よ?」

ん、これは緑一君の声だな。やはり夕食を食べてなくてお腹が空いていたのだろうな。

風呂上りだからきっと抱きつけば緑一君は動揺するに違いない。……よし。

「天宮先輩。余計なこと考えてるでしょう」

「な、なんでわかったんだい?! 完璧なポーカーフェイスだったはず……!」

「鏡を見ながらさっきの顔をすることをおすすめします」

そ、そんなに変な顔になっていたのか……。

「まあ、緑一が食堂にいるなら簡単なものでも作ってあげようかな。きっとカップ麺を食べるためにお湯沸かしてるんだろうし」

「……ゆっくりするから感覚を覚えろよ?」

「「!?」」

「も、桃香君。緑一君は何をする気なんだろうか?」

「さ、さあ?」

「そういえば理胡君も食堂に来てなかったような気が……」

「ということは」

「「二人で何かをしていた……?」」

女子寮内で不純異性交友は認めない! ましてや緑一君との不純異性交友はとくに!!

「これは女子寮長として見逃すわけにはいかない!!」

「あたしも幼なじみとして見逃せない!!」

「桃香君、食堂に乗り込むよ!!」

「はい、天宮先輩!!」

緑一君、いくら女神様とでも不純異性交友は許さないからね!!

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