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工業男子は七人の女神様に崇拝する  作者: 鹿島夏紀
最二章 管理人と乙女が燃えるクラスマッチ
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第19話

「緑一くんと一緒にお昼を食べるのは白菜だよっ」

「何を言ってるんだい? もちろん電子科の私が食べるに決まっているだろう?」

「緑一はあたしと一緒に食べるの」

「一緒に食べればいいじゃねえか」

「「黙ってて」」

「...」

言い争っているのは、白菜と桃香、嘉野先輩。別に弁当ぐらい一緒に食べればいいじゃねえか、と思うのだが、2人の考えは違うらしくずっとこの調子だ。

「あの、緑一さん」

言い争っている2人の隣に、建築科の女神様である葵が近寄ってきた。

「葵か、どうした?」

「その、お、お弁当を作ったので一緒に食べませんか?」

「弁当か...」

「あ、嫌ですよね... 私が作った弁当なんて... わかりましたメチャクチャにされて死んできます...」

「別に嫌じゃあないし! それに色々と発言が危ねえ!」

「男に逆らう女は(なぶ)られるのが常識ではないんですか?」

「お前の常識を疑うよ‼︎」

そうだった、葵は朋山家の愛娘で箱入り娘だ... 葵の家柄も家柄で、少々偏った知識を身につけている。確かに常識は(わきま)えているのだが、常識を弁えていないときも多い。

そして料理の腕。

「葵が作ったのか?」

「そうですよ。あまり料理はしない方なんですけど...」

死ぬ。絶対に死ぬ。そう俺の本能が告げていた。

「ちなみに作ったおかずは...?」

「唐揚げがメインです!」

女子高生の中では成長の早い胸を自慢げに、そして料理を得意げに張っている。

だが、

「材料を教えてくれ」

「材料ですか? えっと、豚肉とジャガイモ、人参、玉ねぎとかですね」

どうやっても回避できないのか。

「それ、カレーの材料だろ」

「はい? カレーを作るときはごぼう、牛肉、サツマイモ、大根、長ネギですよ?」

肉の種類はなんでもいい。ビーフカレーってあるしな。

問題はその他だ。カレーにごぼうを使っている奥様方なんて見たことないし、ましてや大根なんてなぜ入れたのか理解できない。

「あ、もちろん唐揚げは蓮根とかキャベツですよ?」

「なんでキャベツ揚げたんだよ……」

「おいしそうじゃないですか」

「おいしそうなだけでなんでも揚げようとするな」

「まぁまぁ、とりあえず食べてみてください」

キャベツのフォルムをした揚げ物を無理やり口の中へと放り込まれる。

目を瞑り、意識が飛ばないように、って……

「悪くない」

そこまで不味いわけではなかった。常識的な味ではないが。

「でしょう?」

「でもキャベツのシャキシャキ感が台無しだけどな。味は、まあ、葵が作ったにしてはマシな方だ」

「それってどういう意味ですか!?」

「マシってことだ」

「だからどういう意味ですか!?」

「不味くはない」

「ほ、本当ですか!? では、どんどん食べてくださいね!」

ドンッという鈍い音を立てて、目の前に置かれた重箱並の大きさの弁当箱には、

「おいおい……」

いろいろ怪しいフォルムをした揚げ物が入っていた。

「全部こんな感じか?」

「はい、皆さんと食べることができるようにたくさん作りました!」

にっこりと可愛らしく微笑む葵。だけど、俺だけじゃあ絶対に食べきれない。

「嘉野先輩と桃香もい……」

さっきまで後ろの方で言い合っていた二人はいなくなっていた。俺のすぐ後ろ、葵には見えない位置に小さく何か書いてあった。

おそらく木の枝かなにかで書いたのであろう、「頑張れ」と言う文字が地面に彫ってあった。

あいつら……、逃げやがったな。

「さあ、どうぞ!」

「あ、ああ……」

弁当箱を笑顔で差し出す葵を断れるはずもなく、

「いただきます……」

昼から医務室で寝込むことになりそうだな、と思いつつ口に運びはじめた。

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