表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
工業男子は七人の女神様に崇拝する  作者: 鹿島夏紀
序章 工業男子の成り果てと女子寮
2/37

第1話

「「待てやコルァリャリャリャァヒャァァァァァ‼」」

「嘉野先輩、走りますよ!」

「持久走かい?」

「そんな感じですゥゥゥゥゥォォ‼」

ガシャンッ‼

野郎どもが投げた、ペンチやプライヤ、酷いものではパイプレンチ。...当たったら死ぬぞ?

「ははっ、スリルがあって楽しいね」

「何言ってんの!? 楽しいわけないじゃん‼」

横で愉快そうに笑う嘉野先輩は放置として。

さて、どこに逃げようか。

逃げる場所の候補としては、屋上、実習棟、旧校舎。

「緑一君、旧校舎に逃げよう!」

「あそこは整備されていないから危ないんじゃあ...?」

「大丈夫だ! 私に考えがある‼」

「「緑一ィィィィィィ‼」」

「それにいつまでも走っていたら、疲れて捕まってしまうのがオチだ!」

「わかりました! 旧校舎に逃げましょう!」

「よしっ、こっちだ!」

嘉野先輩を先頭に校舎の間を走り抜けて行く。

さすがに、校舎の間を大人数で走ることは難しいようで、体力のない野郎はいなくなり、体力のある運動部の崇拝者だけが追いかけてきていた。

運動部に所属していないからって、体力がないと思うなよ?

あれだけ毎日追いかけられていたら、嫌でも体力がつくからな‼

「緑一君、こっちだ!」

嘉野先輩が指し示した場所は、旧校舎。ではなく、

「...地下倉庫?」

「いいから、あそこに逃げるんだ」

地下倉庫の入り口は、錆びついた、年を感じられる鉄格子でできていた。

だがしっかり南京錠がついてあり、入ることはできないと思った。

「入れないと思ったかい? 鍵なら...ほら」

「なんで持ってるんですか...」

「事務員に色仕掛けで合鍵をもらったんだ」

この人、女狐か...?

「よしっ、さあ入って」

地下倉庫への階段を下りる。中は思ったより暗く、ちょうど地面に接した窓を開けなければ、視界が優れないほどだ。

「「緑一の野郎、どこ行きやがった...?」」

隠れてから数分後、体力のない野郎どもが汗を流して走ってきた。

「嘉野先っ、むぐっ!?」

「しっ。まだ入口近くでうろついている。...なぜこういうことだけに体力と知恵を使うのか、私には理解しがたいね」

「そ、そうですね...」

嘉野先輩は後ろから、首に腕をまわし、俺の口を抑えている。つまり、抱きついているような状況であって健全な男子としては嬉しいとかそんなことはないけどやっぱり柔らかな感触がっ‼

「すぅ、ふぅ...」

「...っ」

嘉野先輩の静かな呼吸で息が首にかかり、吐息が妙に色気を感じる。

こんな状況でなければ、なんとも素晴らしいシチュエーションなのだが...

「そろそろいいかな..?」

お願いですから耳元で喋らないでくださいっ...!

耳にかかる吐息が艶かしい...!

「いなくなった、みたい、ですね」

窓から覗くと、誰もいなくなっていた。

「まったく... こんなに走ったらさすがに疲れるね」

「ええ。疲れますね...」

俺は主に先輩のせいで精神的に疲れましたけどね!

「さて、そこのドアから旧校舎に移動しよう」

「ドア?」

暗くて気がつかなかったが、奥に俺の肩ぐらいのドアがある。...前かがみになれば通れそうだ。

「私が先に行く。ドアの鍵を閉めてついてきてくれるかい?」

「わかりました」

「それじゃあ、先に行くよ」

しばらく使っていなかったのか、ギシッとドアから怪しい音が響く。

鍵を閉める。中の通路には電気がついていないため、携帯のライトで通路を照らす。

「(やっぱり少し前かがみにならないとか...)」

前にいる嘉野先輩も同じように、携帯のライトで通路を照らしている。のだが!

「(あまり正面を向いて歩けない...)」

正面を向いて歩けないというのは、前かがみになっている。というわけではなく、前かがみになっているせいで、嘉野先輩のスカートが危ないのだ。

究極の絶対領域なのだろうか。ただでさえ短いスカートがもっと短く見える。

「...ここだ。緑一君、肩車をしてくれないかい? もちろん上を向くことは許されないからね」

俺を殺す気か...!? こんなに見せつけてはいないが、見せつけて、挙句の果てには肩車をして、上を向いたらいけないときた!

「りょ、了解です...」

「んしょ、っと。いいかい? 絶対に上を向いたらダメだからね」

「努力します...」

上で何かを動かす音が聞こえる。

覗きたいというか、そんな邪な考えじゃなく、純粋にこの通路が、どこに繋がっているのか知りたいだけであって、先輩のスカートの中を見たいなんてこれっぽっちも思っているわけで...

「よし、...ほいっ」

肩から重さが消えた。もう上を向いても大丈夫だだろうか...

そんな思っていたとき、目の前に1本のロープが垂れ落ちてきた。

「これで上ってきてくれ」

「わかりました」

ロープ1本で登るなんてやったことないが、マンホールみたいに円状になっていたため、足と背中で体を張り、ロープを引っ張って、少しずつ登る。...ブレザーがすごい汚れそうだな。

「...っしょっと」

ようやく登り終え、辺りを見渡す。

見覚えのない暗い部屋。旧校舎ならば、何度か入ったことがあるため雰囲気で分かるのだが...。

「嘉野先輩...?」

さっきから嘉野先輩の姿が見当たらない。

暗いため見えないだけもしれないが、もう暗さには目が慣れている。

「どこにいった...?」

「ここだよ」

背後から聞こえる先輩の声。しかし、振り返っても誰もいない。

「こっちだ」

もう一度よく聞くと、目の前にある鏡から声が聞こえる気がする。

「...鏡?」

「ご名答。鏡でつくった引き戸だよ」

鏡が横に滑る。その中から嘉野先輩が出てきた。

「なんで鏡なんかで...」

「もし、侵入経路がばれた場合の対策さ。ここなら暗い。これがまさか引き戸だとは思わないだろう」

無駄に凝ってるな...

「その引き戸の向こうに何があるんです?」

「気になるかい?」

「そりゃあ気になりますよ」

「じゃあ、ついてきてくれ」

暗がりの中、携帯のライトを頼りに、嘉野先輩の後ろをついていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ