プロローグ
「キュェェェェェェェイ‼」
工業高等学校。それは、暑苦しい猛者たちが生活する、ほぼ男子校である高校。
とりあえず、キチガイが多い。そして暑い。熱い。マジで熱苦しい...
「嘉野様ァァァ‼ こちらを向いてくださいィィ‼」
「ん? 何か用かい?」
こんなほぼ男子校でも、いつか彼女ができると信じているやつも少なくはない。というより、『高校になったら青春ラブコメできるぜヒャッハァ!』みたいな幻想を頭の中で展開している奴が多いんだ。
そんな中で現実に気づいて、こんな男子しかいない高校でも頑張ろう。と前を向いて頑張る野郎どもに希望、夢の存在になっている生徒がいる。それは、
「ああっ! その笑顔、その立ち振る舞い、その容姿! まさに女神様に相応しい!」
そう。女神様。ここの男子生徒は、女神様という美少女を崇拝する。
俺の学科の電子工学科にも女神様はいる。
「ですよね、天宮嘉野先輩」
「どうしたんだい? いきなりフルネームで。いつものように「嘉野」と呼んでくれて構わないよ」
この人だ。天宮嘉野。
「そんなこと言ったら、確実に野郎に殺されます...」
「はは、まさか。...私の可愛い後輩を殺める生徒などいるわけないじゃないか‼ なあ、みんな‼」
「「ウォォオォォォォォ‼」」
ダメだわこりゃ… あいつら目が嫉妬に狂っているぞ...
「ほら、緑一君。君を殺める生徒など存在しないさ」
貴女は、怒りと嫉妬に狂っている目をした野郎が見えないんですか...?
「そうだ、緑一君。聞いてもいいかな?」
「...なんですか?」
「付き合ってくれないかい?」
「ぶっ!?」
なんですかその、お茶にでも誘う感覚での告白‼
返答次第では、本当に昇ることになるぞ...!?
「どうだろうか?」
「「...」」
怖いですよ。ええ。本当に。
あの人たちの顔が般若ですもの。
「嘉野先輩、場所を変えましょう」
ここではどんな返答でも殺られる可能性があるため、場所を変えるべく手をに握った瞬間。
「「ウォルォォォォォォォォォ‼」」
「やっべ‼」
雄叫びをあげながらこちらへ駆け寄ってくる工業男子。ホラー映画のゾンビのようだ。
さて、野郎との楽しくない、鬼ごっこの始まりだ。