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衝動 2

振り返り、街を見下ろすと

援軍として兵士の一軍が街に流れて来るのが見えた。


数としては数千人くらいに見える。


普通であれば逃げなければいけない程の数だ。

だが今日はダメだ。

この夜が、この闇が、この呪いが僕を突き動かすのだ。


「おい! 丘の上にいるぞ!」


兵士の1人が僕を見上げ、指を差す。

喚声と共に一斉に数千の兵士が丘を登ってくる。



いいだろう。

相手をしよう。

僕は止まれない。僕は止まらない。

果たしてお前達は僕の呪いを受け止められるか……


試そうじゃないか!!!!


僕は呪文を唱えながら丘を下る。


「……彼らとともに住み、彼らはその民となる――!」


召喚魔法。

スケルトンなどと言うオモチャとは違う。

闇の重装騎士の召喚。

その数1000体。


強大な魔法が生み出した軍勢だ。


さぁ! 殺し合おう!! 存分に!


「……あはははははははっ!!」


黒い重装騎士団が黒い雪崩となり丘の上を駆け下っていく。


「う、うわぁぁぁぁ!」


数では人間の兵士の方が勝ってはいるものの

不意に現れた重装騎士団の軍勢に気勢を削がれたちまち陣形を乱す。


馬に踏まれ、槍に貫かれ彼等は死んだ。

地獄絵図だった。


もっとだ! もっとだ!

もっと僕に命をくれ!


僕は止まれない。

お前達は僕を止められない。

ならばもはや死しか残っていない。


後衛の弓兵達が必死に矢を放ち応戦するが

重厚な漆黒の鎧は、いとも簡単にそれを跳ね返す。


瞬く間に兵士の半数を死に追いやった。


闇の軍勢の中を僕は歩く、

これが僕の復讐だ。

これが僕の呪いだ。


こんなにたくさんの兵士がいたらオウル村は救えたのだ。

いや、この半分でも、事足りていたのだ。


「お前達はあぁぁぁあぁ!」


意味がない!

何の役にも立てていない!


これだけの兵士を揃えていながら、オウル村を救わず

今はアシュベルの街さえ救えていない!!


生きていても意味がない!!

死ぬしかない!


僕に召喚された軍勢よ!

彼等を殺せ! 殺しつくせ!


「ダメだ……逃げろおぉぉ!」


兵士達はついに剣を捨て、逃げ始めた。


「逃げるだと!? バカな事をするな!

 本来、街を守るために先に死ぬべきだったのは

 お前達の方だろう!?

 後から出てきて、その上逃げたのでは

 死んだ村人も報われまい!!

 逃げるな! 剣をとれ!! 抗え!!!」


僕の怒声など聞く耳持たず、我先にと逃亡する。

ある者は、前を走る兵士の肩を掴み

それを倒し、自分がより早く逃げようとし

ある者は、背中から重装騎士の槍に貫かれ死んだ。



全てが終わると、そこには何も無かった。


人も街も何も無かった。


僕は累々と築かれた屍の道を歩く。

これが、僕の道なのだ。



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