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変革 3


隊長と魔術師はどこへ行ったのか……。

僕は辺りを見回す。


居た。


こちらへ向かって歩いて来る。


焦るな。確実に、確実にだ。

まずは魔術師からだ。

ローブを着ている方が見るからに弱そうだ。

隙さえつけば、簡単に殺せる。と思った。


もう少し、もう少し、近づいて来い……。


しかし、その足がピタリと止まる。


崩れた家に押しつぶされた死体の

生死を確認しているのだ。

動かない死体の頭を足蹴にし、

何度も踏みつける。


「気持ち悪いな」


と言って魔族の隊長が足蹴にしていたのは……







母さんだった。


「……あぁぁぁ!!!」


激情の波が押し寄せる。


しまった。

思わず飛び出してしまった。

とは思わなかった。


殺してやる! それだけだった。


母さんを殺した上それを辱めるというのか。

お前達は!


「殺してやる!」


僕は短剣を手に、魔族の隊長に向かって走った。

しかし、距離が遠い。その間に魔族は剣を抜き横に構える。


真直ぐ短剣を突き出すが、魔族の隊長は身を横に逸らす。

勢い余って通り過ぎてしまい、慌てて振り向くと、

今度は腰を落として剣を深く構えている。


次の一合で僕を切り殺すつもりなのだ。


だが僕は止まれない。

母さんを殺し、その上更に辱めを与えるこの魔族を

例え殺されても許しはしない。


僕は、ためらわず、躊躇せず、短剣を強く握った。


「うわぁぁぁ!」


そして絶叫し、短剣を突き出す。


「……灰は灰に、塵は塵に――!」


突然、魔族の隊長の隣にいた魔術師が魔法を放つ。

黒く槍のような形をした棘が僕に向かって飛ぶ。

とっさに短剣で防ごうと振り上げたが、

こんな小さな刃物で防げるような大きさではなかった。


なかったが、その黒い槍は短剣に反射され

魔族の隊長の喉を貫いた。


「ひゅ……」


と短い声を出して隊長は倒れた。


「に、人間! その短剣は転生儀式の!?」


僕には何の事だか分からない。

だが今、この状況が示すのは、

魔族の隊長は死に。魔術師の魔法は僕には効果がない。

という事だ。


そうなれば魔術師などゴミだ。

僕は短剣を魔術師の胸に突き刺した。



  --・--



魔術師の持っていた魔道書。

こんな時に母さんが僕を商人にしようと

文字を教えた事が役に立つなんて皮肉だ。


僕は机の上にそれを広げた。


それは魔道書と言うより、メモ紙のようなものだった。

呪文がいくつも記されているが、その効果については書いていない。


しかも僕は魔法など使った事がないし、

もちろん使えないのだ。

僕が魔法を使えたらどんなに楽だろう。とは思った。

どんなに楽に、魔族を人間を殺せるだろう。と思った。


今の僕にはそれしかないのだから。


「……道であり、真理であり、命――」


ぼそっと魔道書の一節を読み上げてみた。

が、やはり何も起きない。

当たり前だ。

そう思って本を閉じた。


その時、誰かに足を掴まれる感触。


机の下を除くと、そこには

おぞましい血に濡れたスケルトンが僕の足を掴んでいたのだ。


「!!」


驚いて立ち上がり机を倒す。

床からスケルトンが上半身だけ出てきている。

それは徐々に上半身だけでなく、身体全体を露にした。

それだけではない。

気付けば壁から、天井から、ベットの下から。

無数に現れているのだった。



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