変革 2
村の中を探索する魔族の後を追う。
ゆっくり、慎重に、間違いなく殺すため。
魔族は転がった村人の死体を、蹴り、
生死を確かめながら、奥へと進む。
「グエイン様も用心深いな」
「誰も生き残ってはいないだろうに」
魔族の声に、ぎゅっと短剣を握り締める。
いるよ。
生き残りはいる。
お前達を殺すために、僕は、いる。
今すぐ飛び出して八つ裂きにしてやりたかったが、
多勢に無勢では敵いはしない。
チャンスを、待て。
やがて、隊長と魔術師。斧を持った3人。
この組み分けで分かれ、探索を始めた。
隊長の方を尾行しようとしたが、
3人組は僕が寝泊りした家の方へ向かって行ってしまった。
――まずいな。
荒れ果てたとはいえ、
そこに何かしら僕の痕跡が残っているに違いないかった。
僕はゆっくり、その3人を追った。
1人、2人、と順番に僕の家に入って行く。
そして3人目。
最後尾の魔族が家に入ろうとした時、
後ろから、その髪を掴み思いきり引いた。
「うっ……!?」
小さな声を漏らし上を向く。
僕は無防備に晒された首を短剣で搔き切った。
血が噴水のように飛び、僕に降り注ぐ。
それに気付き、2人目の魔族が振り返る。
と、同時にその顔面に短剣を突き立てた。
「ぎゃあ!」
彼の悲鳴に1人目の魔族が身構えてしまった。
素早く手に持った斧を振りかぶると、
僕に向かって、横に一閃する。
とっさに突き立てた短剣から手を離し、
それを避ける。
丸腰になった僕に、じりじりと間合いを詰めようとする。
僕はさっと身を翻し、外に飛び出しドアを閉めた。
そして最初に殺した魔族の斧を手に持ち、
それを構えた。
相手は、僕が丸腰だと思っている。
丸腰の、只の人間だと思っている。
おそらく何の躊躇もせずに……。
家のドアが開いた。
僕はその瞬間を狙って、斧をドアめがけ叩きつけた。
その斧は、薄いドアを突き破り魔族の脇腹を抉った。
「ぶおぉぉ……」
不自然な声を出して、魔族は倒れた。
僕は壊れたドアの中に入って、それを閉める。
「こ、殺すなら、早く殺せ!!」
痛みにのたうち回っている。
「いいとも、1秒でもお前達が長く生きている事は
許される事じゃあないからね」
僕は手に持った斧を、
まるで薪を割るように、
振り下ろした。
……そうさ。
1秒でも生きていてはいけない。
母さんは1秒でも生きていない。
もう死んだんだ。
同じ事なんだ。これは。