変革 1
オウル村の廃墟。
その多くは焼かれ灰になったが、
幾つか火の手から逃れた家があった。
僕はその一室にいた。
寝苦しい。
喉が、渇く。
僕はむせ返るような身体の火照りを感じ目を覚ました。
ベットから身体を起こして、
戸棚に開けて、給水ボトルを取り出す。
蓋を開け、喉を鳴らして水を流し込む。
「ぶふっ……」
咽る。
喉が痺れて上手く飲めない。
いや、それは喉だけじゃなかった。
給水ボトルを持つ手、戸棚の前に立つ足、
身体全体が痺れている。
身体に熱を感じる。
まるで血が逆流しているようだ。
間違いなく身体に異常が起きている。
何かの病気か?
考える間もなく急に意識が遠くなり、給水ボトルを落とした。
ゴトリ。と、音が聞こえた。
――・――
どうやら床で眠ってしまったらしい。
体を起こすと部屋はまだ暗い。早朝なのだ。
「う……」
体の節々が痛む。
それに体の痺れがまだ残っている。
原因は分からないが病気かもしれない。と思った。
僕はローブを纏い、廃墟の外を探索した。
生きていくために。
もともとウドラ山脈から流れる川沿いに作った村だ。
そこでは、季節の魚がとれよう。
そしてそのウドラ山脈のふもとには森もある。
時期を選ぶが果実や動物も期待できた。
村。というものは存在できるための条件を
満たしていなければ存在できない。
成るようにして、成るものだ。
しかし、僕には魚や動物を狩る技術がない。
更に言えば弓や銛も、ここにはない。
あるのは、あの日拾った魔族の剣だけだ。
ふいに足音が聞こえ、近くの茂みに身を潜めた。
「……だ。……は?」
声も聞こえる。
僕は声をする方に目を凝らし、
ぎゅっと短剣を握り締めた。
やがて見えて来る。
魔族だ。
5人もいる。
剣を持ち鎧を着込んでいるのが隊長だろう。
身軽な格好をして斧を持っている3人はその部下で、
ローブを着ているのが魔術師だろう。
村の残党狩り。というところか。
足音が近づく。
僕の鼓動が高まる。
魔族という響きだけで、胸の中に
メラメラと狂気が込み上がるのを感じる。
母さんを、父さんを、村の皆を殺した魔族だ。
殺してやる。
殺してやる。
でも、待て。
まだ早い。ゆっくり、確実に、
1人ずつ、1人残らず。
殺すんだ。
やがて魔族達は廃墟と化した村に足を踏み入れた。